「加齢臭+繁殖期のオス」ジビエのビジネス化が難しいのは「美味しくない肉」があるから…解決策を発見した男性は「学校」をつくった
大分県宇佐市の山間部に、「日本ジビエアカデミー」という研修施設がある。野生のシカやイノシシを捕獲し、食肉とするジビエ(野生鳥獣肉)。政府は農作物の被害(獣害)対策の一環として利用を推進しているが、消費はそれほど伸びていない。その理由を、アカデミー代表の山末成司さん(50)はこう説明する。 【写真】ダチョウの肉ってどんな味なの? 低脂肪、環境にも優しい 各地で普及に取り組み
「ジビエ肉を商売として成り立たせるには、いくつもハードルがあるから」 そこで、狩猟や解体から肉の判別・熟成、おいしく食べる料理法、販路開拓といったビジネス展開まで一貫して学べるこの施設を、全国で初めて設立した。正しい知識を持った人が広めることで「牛、豚、鶏に次ぐ第4の肉として認められてほしい」と願う。きっかけは、獣害に悩まされた農家の切実な声だった。(共同通信=功刀瞭) ▽捨てられていく動物たち 6年ほど前、ある農家が、食肉加工の工場を経営していた山末さんの元を訪れた。 「相談がある」 聞けば、この農家は長年育ててきた果樹を動物に食べられ、猟友会に捕獲を依頼したという。猟友会はすぐに動いてくれた。最初のうちはうれしかった。ただ、捕獲された野生動物は殺されて尻尾だけを切り取られ、次々に廃棄されていく。尻尾は大分県への狩猟報告のために残すが、ほかは丸ごと捨てられる状況に心を痛め、「農家をやめようか」とまで考えるようになったという。
相談を受けた山末さんは当初、ジビエの処理場を作ればいいのではと考えたが、すぐに思い直した。ビジネスとして成立させる道のりの遠さが想像できたためだ。 まず、適切な処理方法が確立されていない。 一般的な家畜は体重などを管理して出荷するため、サイズの個体差が小さい。だからこそ、剝皮などの解体作業を自動化することが可能だ。しかし、ジビエはサイズの個体差が大きく、一体ずつ手作業で解体を行う必要がある。山末さんは処理方法を学ぶため、九州のみならず山口県や北海道まで足を運び、処理場を見学し、猟師から処理方法を学んだ。 ただ、そこで衛生状態に疑問を感じた。野ざらしの中で処理をしている人、「自分が捕って処理した動物は全部おいしい」と豪語する人もいた。誰もが心配せずに食べられるようにするには、家畜と同様に衛生面でも確立された仕組みが必要だと感じた。 ▽おいしくない個体をどうする? そして最大の問題が「おいしくない個体」をどうするかだった。