日本が直面する新たな「核」問題――原子力艦寄港と核兵器「持ち込み」
AUKUS「第1ピラー」の一環として初の米豪共同によるメンテナンスが実施されたヴァージニア級SSN「ハワイ」[2024年9月10日、オーストラリア・西オーストラリア州HMASスターリング基地](C)United States Navy/Rory O'Connor
石破茂政権の外交・安全保障政策については、「アジア版NATO」や日米地位協定改定、いわゆる核共有など、石破氏が自民党総裁候補として提唱したアイディアが一時注目された。しかし、厳しさを増す安全保障環境のなかで、まずは喫緊の課題に取り組まなければならない現実は変わらない。日米同盟、対中関係、ロシアによるウクライナ侵攻への対応、エネルギーなどである。 そのうえで、対応を求められるものとして確実に忍び寄っているのが、新たな「核」問題である。これには、原子力艦(原子力動力を有する空母や潜水艦)の寄港と、核兵器の持ち込みの問題が含まれる。いずれも、喫緊のというよりは、中長期的な課題だということもできるが、ことがらの性質から、新たな決定に時間がかかるであろうことを考えれば、本格的な準備が必要になりつつある。順にみていこう。 第二次世界大戦後、米国が原子力動力の空母や潜水艦を導入するなかで、そうした艦艇の寄港に際しては、原子力安全性の観点で、1960年代から、日米両国政府の間で原子炉の安全性の保証やそのための手続き、環境モニタリング、事故の際の対処などに関するやりとりや 合意が積み重ねられてきた 。
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鶴岡路人