「野崎氏は被告に不満」 ドン・ファン事件、検事が家政婦の供述朗読
「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家・野崎幸助さん(当時77歳)を殺害したとして、殺人罪などに問われている元妻の須藤早貴被告(28)の第10回公判が8日、和歌山地裁であった。 【証人2人が出廷 ドン・ファン殺害、知人女性と大学教授の記事はこちら】 午前は検察側の証拠調べがあり、野崎さん方で働いていた家政婦の供述調書の一部を検察官が読み上げた。野崎さんが亡くなった2018年5月24日の午後8時以降について「須藤被告はいつも2階にいるのに、この日はなぜか1階にいた。(野崎さんがいた)2階から『ドン』という音が聞こえたので、須藤被告が2階に来ないことを野崎さんが怒っていると思い、須藤被告に上がるよう言ったが、なかなか上がらなかった」と供述したという。 このほか、家政婦は「野崎さんに対する須藤被告の態度は冷たく、野崎さんは強い不満を持っていて、離婚を迫っていた」とも供述したという。 家政婦の供述調書を作った別の検察官の男性が証人として出廷し「質問に対してきちんと回答してくれたと思う」などと述べた。 午後も証人尋問があり、法医学が専門で薬毒物に詳しい川崎医療福祉大学副学長の男性が出廷した。「野崎さんは少なくとも1・82グラム以上の覚醒剤を経口摂取し、摂取から2~4時間で死亡した」との見解を示した。覚醒剤の血中濃度や尿中濃度、体重などから計算している。 第9回公判は7日にあった。家政婦の妹が証人として出廷し、18年5月24日について「姉は午後4時前から7時半ごろまで私の家にいた」と語った。 起訴状によると、須藤被告は18年5月24日、殺意を持って、野崎さんに致死量の覚醒剤を摂取させ、急性覚醒剤中毒で殺害したとされる。須藤被告は起訴内容を否認し、弁護側は無罪を主張している。 検察側は、犯行時間帯は同日の午後4時50分ごろから8時ごろまでで、家政婦が外出してから帰宅するまでは、野崎さんと須藤被告の2人だけが野崎さん方にいたと主張している。
紀伊民報