男性が多いチームにAI女性メンバーを入れるとどうなるのか?それが生成AIでも多様性が発揮されるという驚きの研究
■ 「バーチャル女性メンバー」の役割を果たした生成AI この研究を行ったのはコーネル大学の研究者ら。彼らは178人の被験者を集め、男女いずれかが多数派となるチームにランダムに割り当てた。各チームは3人の人間と、1つのAIエージェントで構成されていた。 AIエージェントとは文字通り、人間のように行動するAIだが、この実験では研究者がChatGPTを使ってさまざまな発言(テキスト)を生成。それを別の音声合成AIを使って音声化し、オンライン上に投稿するという形で操作された。なお、人間の被験者に対して、AIが参加していることは明かされなかった。 ここで加えられたひねりが、エージェントの性別として、男性と女性両方を用意するというものだ。 エージェントは画面上に表示され、指示を読み上げたり、アイデアを提供したり、時間管理を行う役割を担った。それを男性もしくは女性の声で行ったのだ。 男性が多数派を占めるチームに男性もしくは女性の声をしたエージェントが参加するパターンと、女性が多数派を占めるチームに男性もしくは女性のエージェントが参加するパターンの、合計4パターンが設定された。 さらに、被験者たちにオンラインで実行してもらうタスクとして、性別に関係のないタスク(水とエネルギーの節約に関するアイデアをブレインストーミングする)と、性別が関係するタスク(従業員のプロファイルを評価し、昇進候補者を決定する)という2種類が用意された。 また、各チームはランダムな順序で、男性のエージェントと女性のエージェントの両方と協力してもらった。 それぞれのチームに作業を実施してもらった後、研究者らは会話ログを分析して、被験者たちがどの程度アイデアを出したかや議論にどれだけ参加したかを評価した。結果はどうなっただろうか。
■ 生成AIが疑似的に高めた組織内の多様性 まず全体として、男性の被験者には、チームでのディスカッションにおいてより積極的に参加し、より多くを話し、より多くのアイデアを提供する傾向があった。一方の女性被験者については、チームワークをより負担に感じ、チーム討議中に話すことが少ないという傾向が見られたそうである。 では、AIエージェントの性別はどのように影響したのだろうか。 まず女性については、性別上で少数派となった場合に、女性の声のエージェントがチーム内にいると、より多くのアイデアを出して、議論にも積極的に参加するという傾向が見られたそうである。この傾向は特に、性別が関係するタスクにおいて顕著だったそうだ。 一方で少数派となった場合の男性メンバーは、女性のエージェントがチームにいる場合により多く話す傾向が確認されたものの、その多くは社会的な話で、実質的なアイデアの貢献は少なかったとのこと。 これらの結果を受けて研究者らは、ジェンダー上の調整がなされた音声エージェントは、チームのダイナミクスに影響を与え、ジェンダーバランスの悪いチームにおいてマイノリティメンバーをサポートすることができると結論付けている。 この実験は音声エージェントがAIであることを隠した状態で行われており、AIだと明らかにした場合に同じ効果が得られるかどうかは確認されていない。実際にはAIであることをずっと隠し続けるわけにはいかないだろうから、そもそも最初からAIであることを明かした上で各種のタスクを支援することになるだろう。 その場合、AIの意見や指示を重視しない、または逆に過度に頼るといった行動が生まれて、今回の実験結果とは異なる影響が見られるようになるかもしれない。 とはいえ、今回の実験結果は、生成AIが組織内の多様性を「疑似的に」高められる可能性を示すものだ。