作家もののうつわに一目惚れしたら? 賢者に聞く「うつわ集め」のコツと 常用するお洒落で万能な名品
うつわのある暮らしには憧れるけれど、どんなふうに集めていったらいいんだろう……? うつわを手軽に、上手に暮らしに取り入れるためのヒントを求めて、達人たちを訪ねました。 【画像】「盛ったときに決まりやすい」賢者が愛用する万能なうつわ
◆Vol.14 お話を聞いた人 恵藤 文さん
インテリアショップ勤務、うつわと雑貨専門店のプロデュース業を経て、2009年に独立し「夏椿」を東京都世田谷区にオープン。2018年に鎌倉へ移転。現在は企画展と常設展を繰り返しつつ、日本各地の作家が生み出す良品を紹介している。
賢者に学ぶ「うつわ集め」のヒント
作家さんのうつわ選びというのは、とにかく何かひとつでも「まず使ってみる」ことからだと思っています。そのひとつを選ぶ上で気にかけてほしいのは、「質感」ですね。触った感じで、自分が好きか、そして使いやすいかどうか、考えてみてほしい。 例えば箸だったら竹のもの、漆のものでも感触も違うし、先のとがり具合で使いやすさも違いますよね。スプーンなら、金属と漆のものでは口当たりも全然違う。使い込んでいくうちに質感が変わっていくこともある。うつわも同じで、そういういろいろなことを、うつわを選ばれるお客様には出来るだけご説明するようにしています。 作家さんのうつわで、一目惚れしたものがあったら買うべきです。ものによっては二度と出合えないし、あるいは同じものを作ってもらえるのは4年後、なんてこともあります。ものすごく気に入ったものは思い切って、家族分そろえるといいですよ。私もうつわと付き合ううち、そうするようになりました。 メインの料理をのせるプレートや汁椀は人数分あると特に便利で、食卓の統一感も出て、いいものです。ハードルの高いことを言っているとは思うんですが(笑)、作家さんはやっぱり同じものを大量生産する機械じゃないし、年によってガラッと違うものを作ることもあるわけです。彼らは作りたいものを作る人たちですから。だからこそ「これは!」と思えたときには、家族分を含めて買うように私はなりました。
恵藤 文さんが常用する万能系のうつわ
私が日常的に使っているもので、使いやすく、持っていて間違いのないものをご紹介します。まずは木のボウル。サラダをよく作る人におすすめです。木のものはボウルに限らず、経年変化が楽しい。使っているうちに、色も手ざわりも変わってきて、そこが味になるというか。 このボウルは直径が26センチぐらいあって高さもありますが、ふたり分の野菜を入れてちょうどいいぐらい。少し大きいかな、と思うぐらいが納まりはいいです。 この白いリム皿は本当によく使っているもののひとつ。リム(皿のふちの部分)がしっかりとあることで余白が生まれて、盛りやすい。深さもしっかりあるので、盛ったときに決まりやすい。パスタやカレー、サラダにもいいし。日本の家庭料理の煮物とか、なんでも合います。 丼(どんぶり)と、中鉢も万能系のうつわで、持っているとあれこれ活躍してくれます。この丼は直径が16.5センチぐらい。丼ものはもちろん、洋風のスープにもいいし、おかずの盛り鉢としてもいいですね。れんげがまた私にとって使いやすいサイズなんですよ。レンゲって、合う大きさが人によって微妙に違うものなんです。 中鉢は直径が20センチぐらいで、こちらも本当になんでも合います。スープや盛り鉢にいいですが、私は最近、これにパスタを盛りますね。一般的なパスタ皿よりも、年齢と共にだんだんと少し小さめのものが適するようになりました。白や乳白色のうつわは、いろんなものを盛りやすく、手持ちのものとも合わせやすいのがいいところです。 そして皿に陰影がある、濃いグレーのこのお皿も万能系なんですよ。直径は25.5センチぐらい、これも家族分を買いました。年末年始に家族が集まるとき、おそうざいやおつまみの盛り合わせをのせて楽しんでいます。グレーは料理の色を選ばない。どんなものも、納まりがいいんです。細々盛り合わせるだけでなく、どんと何か一品を盛るのにもいい。 今回はうちで活躍してくれているメンバーの中から、特にオーソドックスで、使いやすいものを中心にご紹介しました。気に入ったうつわに出合ったら、まずは使い込んでみて、自分にとっての使いやすさを探ってみてください。 白央篤司 フードライター、コラムニスト。「暮らしと食」がメインテーマ。主な著書に、日本各地に暮らす18人のごく日常の鍋とその人生を追った『名前のない鍋、きょうの鍋』(光文社)、『台所をひらく 料理の「こうあるべき」から自分をほどくヒント集』(大和書房)がある。
白央篤司