老いては煩悩に従え! 「不倫バッシング」で日本が衰退するワケ【和田秀樹×池田清彦】
池田 「スケベじじい」ってね。でも艶っぽいこともダメで不倫もダメ、健康のために酒もタバコもダメ。ダメ尽くしで長生きできたとしても、一体なんのために生きてるのかね。 和田 元気ホルモンという意味では、歳をとっても男性ホルモン数値をある程度キープできている人は要介護状態に陥りにくいのです。では、日本がそういう健康寿命を延ばす施策を考えているかというとまったく逆で、むしろ「オス」を痛めつけ、どんどん弱らせるようなことばかりです。日本は先進国の中で無修正のオトナ向けの動画が解禁されていない唯一の国で、若い世代はパソコンやスマホでなんでも探し当てられても――。 池田 年寄りは苦労するだろうね。ITにくわしい人ならともかく、ネットに疎い人はアダルト向けの雑誌やビデオなんかを実際に店で買わないといけない。 和田 意識的に男性ホルモン分泌を上げて元気を出さないといけないシニア層が、その一手段である性的な動画にアクセスできない。これは「老人いじめ」では。 池田 そういう動画があると聞いて、それなら自分も観てみようと慣れないパソコンをいじるうちにヘンなサイトに引っかかって、架空請求にあう老人も少なくないとか。 和田 実際に詐欺被害にあっても、性的な動画だなんて口が裂けてもいえないでしょう。友人、まして妻や子どもに相談できるはずもないから泣き寝入りするしかない。「カモ」の心理を見越した卑劣な詐欺ですね。 池田 歳を重ねるにつれて性欲は減退していくもの、日本ではなぜかそう思われてるので、「スケベじじい」にとってはかなり生きづらいよな。
動画くらい、自由に観られるようにしたらいい
和田 おっしゃる通り、日本には「スケベじじい」を嗤うというか、バカにして蔑む風潮が強いですね。数年前、新宿歌舞伎町のマンションの一室で無修正のオトナ向けDVDを売っていた業者の摘発が報じられた時は、まるで極悪人みたいな扱いでした。 でも、ネットにアクセスして観られない老人向けに今どきDVDを焼いて売るだなんて、そこは「人助け」になっていた部分もあったんじゃないかなと。 池田 なるほど、それはそうだ。 和田 警察が踏み込んだ時、居合わせた客のほとんどが80代だったそうで、ニュースではそれも含めて、いい歳をして……とお客をバカにしているようだった。 でも、かの文豪永井荷風や谷崎潤一郎のように、老いても艶っぽい感性に従う男性は粋だ、という評価がかつては主流でした。渋沢栄一には妻の他に複数の愛人がいて、実子は総勢17人以上。最後の子どもは68歳の時の子という逸話まであり、男の甲斐性として一目置かれた。