乗ってみてわかった…!大阪万博の目玉「空飛ぶクルマ」の運行許可が遅れている「意外な理由」
万博での商業運航は絶望的
大阪・関西万博で予定される商用飛行では、USJ南側の桜島地区(大阪市此花区)、海遊館近くの中央突堤(同市港区)、大阪城のある森之宮(同市城東区)の3ヵ所を離発着の候補地に決め、それぞれのポートと万博会場間を結ぶ計画。道路を使うと渋滞時は1時間近くかかるが、空飛ぶクルマならわずか9分ほどで到着する。 万博が商用運航のとっかかりとなれば空飛ぶクルマの可能性を十分にアピールできるが、高いハードルもある。ANAホールディングスや日本航空など4社が運航を予定するものの、必要となる機体の「型式証明」と「耐空証明」の取得が間に合わないのではないかと言われているのだ。 関係者が打ち明ける。 「量産機を商用運航するためには最初に型式証明、その後一機ずつ耐空証明の取得が必要となりますが、その手続きが遅れているんです。空飛ぶクルマは航空機と比べてかなり簡素化されたシステムのため従来の型式審査が当てはまらない部分も多く、国交省も審査に時間がかかっているからです。そのため万博での商業運航は絶望的で、パイロットだけが乗るデモ飛行の形になるのではないかと囁かれています」 国土交通省の担当者は審査の進捗をこう話す。 「現在、4社から型式証明の申請を受けて審査を進めています。開発が終了した機体を審査するわけではなく、メーカーの機体開発と並行して進めているため、現状で何割まで進んだとは言いにくい。逆にいえば、万博までに間に合うかどうかはメーカー次第です」(航空局) 型式証明の発行が間に合わない可能性を匂わせるような説明だが、仮にそうなっても飛ばせる方法はいくつかあると言う。 「機体を量産する場合にはまず型式証明を取得した後に、クルマの車検証に相当する耐空証明を一機ごとに取得してもらい、設計通りに製造されているかを確認する。二つとも取得すれば、完全に機体の安全性は証明されます。しかし、メーカーが量産を目指す前に万博で飛ばす機体だけに証明が欲しいと希望すれば、耐空証明だけを出して一般客に乗車してもらうこともできます。耐空証明も間に合わない場合には、一般客は乗せられませんが『試験飛行』の許可という形で飛行も可能です」 国交省の言う通りに進めば、商業飛行になるかどうかはともかく、万博上空を空飛ぶクルマが飛んでいる様子だけは見られることになりそうだ。
鉄道会社が興味を示しているワケ
空飛ぶクルマには意外なところが興味を示している。鉄道各社だ。 「JR東日本は、東京から新幹線まで長野へ行き、そこから空飛ぶクルマに乗り換えて白樺湖のスキー場へ行くという設定でヘリを使った実証実験を行っています。JR西日本グループも空飛ぶクルマの離着陸場の関連事業への参画や、ツーリズム事業への検討を重ねる。陸と空の違いはありますが、鉄道駅を降りた後に乗客を運ぶ手段として空飛ぶクルマに可能性を見出しているのです」(鉄道ジャーナリスト)
形山 昌由