人類が遠い惑星に住むための独創的なアイデア どうすれば人間が居住可能な世界にできるのか
現在の数十億人からなおも急増を続ける地球上の人間を住まわせるのに地球の全面積が必要なわけではないことを心に留めておいてほしい。地球の表面の約70%は水であり、陸地は約1億5000万平方キロメートルだが、陸地の3分の1は砂漠だ。 比較のために申し上げると、月の表面は、水と呼べるものは存在しないが、約3700万平方キロメートルの面積がある――1万人程度の乗組員が「家」と呼ぶに十分な広さだ。 もちろん、これにはさまざまな問題がある。大抵の衛星の表面重力は惑星に比べて極端に小さいので、大気を作ったとしても徐々に宇宙に漏れていくはずだというのも、特に重要な問題の1つだ。
■より現実的な「シェルワールド」 これに対処するというのが「シェルワールド」である。工学者のケネス・ロイが提案したシェルワールドは、ベースは普通の小さな衛星なのだが、グラフェン、またはケブラーと鋼鉄の組み合わせなどの比較的単純な素材でできた保護用シェルにすっぽり包まれている。シェル内部では、地球のような大気と生物圏を作り、それを維持することができる。 ロイの計算によれば、火星の大きさをしたシェルは地球の大気の約7%の質量しか必要なく、紫外線と太陽放射からしっかり守ってくれて、おまけに、比較的少量の原材料から短期間で製作できる。それでもやはり、実際に作るのは技術的に非常に困難だろうが、他の方法に比べればはるかに現実的だろう。
(翻訳:吉田三知世)
レス・ジョンソン :物理学者、NASAテクノロジスト