人類が遠い惑星に住むための独創的なアイデア どうすれば人間が居住可能な世界にできるのか
デイヴィッド・ウェーバーの『オナー・ハリントン』シリーズには、人間が居住できる惑星が無数に出てくるが、主なものにはマンティコア、ヘイヴンなどがある。そのような惑星が現実の世界――と言うより、現実の天の川銀河――に存在する可能性は極めて低い。 ■今日の地球の環境は偶然の賜物 現在天文学と古生物学で知られていることからすると、地球の環境は数十億年にわたる歴史で起こったさまざまな出来事によって生まれたものだが、これらの出来事がどこか別の場所でも起こる可能性は非常に低い。
生物に優しい惑星がどこか別のところにあるわけないと言っているのではない。ただ、そんな地球の生物に適合する環境がすでに出来上がっているような惑星はおそらく他には存在しないだろうと言っているだけだ。 地球の歴史で起こった重要な出来事のうち、たった1つでも起こらなかったり、少しだけ違う形で起こったり、あるいは、別の時代に起こっていたなら、今日の地球はまったく違っていただろう。 もしも地球の軌道がもっと太陽に近かったなら、地球は金星に似ていたかもしれないし、もっと太陽から遠かったなら、火星に似ていたかもしれない。強力な磁場と、紫外線をカットしてくれるオゾン層とがなかったなら、地球の表面は絶えず放射に曝され、私たちが知っているような生物は存在しないかもしれない。
また、地球にこれほどの量の水が存在しなかったとしたら、私たちが存続するのに不可欠な酸素を生み出す、光合成を行う植物、藻、そしてバクテリアは十分には存在しないだろう。このような、人間をはじめとする生物に不都合な可能性は枚挙にいとまがない。 太陽以外の恒星を周回している惑星に私たちが旅するとき、たとえその恒星系のハビタブルゾーン〔訳注 恒星系で、主星である恒星からの距離が生物にとって適切な領域。生命居住可能領域〕内に何個か惑星があると予測できても、実際に行ってみたら、人間をはじめとする地球の生物にはまったく適さなかったとわかる可能性もある。