浅田智穂さんに聞く、インティマシー・コーディネーターという仕事。センシティブなシーンは「同意があって成立する」
最近、映像制作に関して耳にすることが多くなった「インティマシー・コーディネーター」という職業。俳優がヌードになるシーンや、身体的接触のあるシーンなど、センシティブなシーンにおいて俳優の安全を守り、監督の演出意図を最大限に実現できるようにサポートする職業です。 【動画】日本でインティマシー・コーディネーターが初めて導入されたNetflix『彼女』予告編 日本では2020年にNetflixの作品で初めて導入され、さまざまな作品に広がり、2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう』でも参加が決まっています。 実際にインティマシー・コーディネーターが導入されると、どんな流れで制作が進んでいくのでしょうか? Podcast番組『聞くCINRA』では、アメリカで資格を取得した浅田智穂さんに仕事の実情を聞きながら、「日本のエンタメ界の課題」について考えました。
『地面師たち』にも導入されたインティマシー・コーディネーター。どんな仕事なのか
―最近の作品だと、話題作のNetflix『地面師たち』にも参加されています。インティマシー・コーディネーターがどんなお仕事か聞かせてください。 浅田:まず依頼をいただいたら台本を読み、どこがインティマシー・シーンの可能性があるかを抜粋していきます。ただ、じつはその前にとても大事なことがあって、私のほうで設けている3つのガイドラインがあるのですが、その内容をプロダクション側にご確認いただいて、お互い合意ができたらお仕事を引き受けさせていただいています。 ―ガイドラインはどういった内容なんでしょうか? 浅田:この仕事はもともとアメリカで誕生した仕事ですが、アメリカにはSAG-AFTRAという大きな俳優組合があります。組合が定めた映像制作におけるルールがたくさんあり、インティマシー・コーディネーターに関してもじつはたくさんのルールが決められているんですが、日本には日本のやりかたがあるし、そもそもそういった組合もありません。 アメリカのやりかたをそのまま取り入れてもうまくいかないと思ったので、スタッフも作品も守っていくために、このガイドラインを守れば最低の安心安全は担保できるのではないか、と思ってつくったガイドラインになります。 まず1つ目は、インティマシー・シーンについては、必ず事前に俳優と話をして、同意を得たことしかしないということです。 シーンの変更はやはりあることなので、それが常識の範囲内の変更か、そうではないのかで全然違ってくると思いますが、大きな変更の場合は必ずインティマシー・コーディネーターを通すなり、ノーと言える状態で聞くということをしています。 ―なるほど。 浅田:2つ目が、必ず前貼り(※)をつけてくださいというルールです。お芝居のために前貼りをつけたがらない方もある一定数いらっしゃるので、安全面と衛生面、スタッフへの配慮も考えて、必ずつけましょうというルールにしています。 3つ目は、インティマシー・シーンはクローズド・セットといわれる必要最小限の人数で撮影する、という方法をとっています。撮影となると数十人のスタッフがいたりするんですが、スタッフ全員が撮影シーンを見るのではなく、見る人を減らして、そのシーンを安全に撮影できる人数でやっています。 (※)性器を覆い隠すものの総称。