浅田智穂さんに聞く、インティマシー・コーディネーターという仕事。センシティブなシーンは「同意があって成立する」
日本では2020年に初めて導入。なぜこの職業が必要とされたのか
―日本だけの話ではないと思いますが、ベッドシーンにチャレンジしたり、露出を多くするシーンがあるとき、「体当たり演技」だと礼賛される風潮がずっとあるようにも感じています。そのなかで俳優の安全が守られる職業ができたことはすごい変化だと思いましたが、そもそも、なぜインティマシー・コーディネーターという職業が必要とされるようになったのでしょうか? 浅田:この名称ができる前、舞台制作の現場に「インティマシー・ディレクター」という職業があり、それが映像業界でも必要とされるようになって、「インティマシー・コーディネーター」と名前を変えたと聞いたことがあります。 SAG-AFTRAは撮影が困難なシーンのルールをたくさん持っているんですが、それをしっかり守るためにインティマシー・コーディネーターが誕生したという話もありますし、HBOの『DEUCE/ポルノストリート in NY』(*1)という作品で初めて入ったという話など、諸説あります。 そのなかで、2017年にハリウッドで「#MeToo運動」が起きて、さらに需要が高まった。インティマシー・コーディネーターが足りない状況になってしまい、1日2日のワークショップで名乗れるようなトレーニングができてしまったこともあり、SAG-AFTRAが認定制度と教育プログラムを設けるようになりました。 ―本当にここ数年に急激に増えていった職業なんですね。 浅田:日本では2020年に、水原希子さん、さとうほなみさんダブル主演の『彼女』というNetflixの作品で、インティマシー・コーディネーターが初めて導入されました。水原希子さんの希望とNetflixが企業理念として掲げているみんなにとって気持ちのいい職場をつくるという姿勢もあって実現したことだと思います。 ―導入から5年が経って、何か業界の変化などは感じますか? 浅田:インティマシー・コーディネーターの依頼が増えたということは一つの目安になると思うんですが、その意味では私は変化を感じています。 少なくとも、私がしっかりとインティマシー・コーディネーターとしての役割を果たせた作品においては、不必要な脱ぎや絡みはなく、俳優の皆さんを守れたのではないかなと思っています。守るというのは、ハラスメントから守るということではなく、本人の意思を尊重できたと思う、という意味で守るという言葉を使っています。