浅田智穂さんに聞く、インティマシー・コーディネーターという仕事。センシティブなシーンは「同意があって成立する」
「検閲ではなく、やりたくないことをやらされるということが問題」
―浅田さんのお話を聞いていると、俳優のサポートという役割もありますが、映画監督のサポート役という側面も大きいように感じました。 浅田:ただ、インティマシー・コーディネーターが入ることで「検閲」になるんじゃないかとか、何か止められるんじゃないか、自分がやりたいことができないんではないかと思われている方もまだたくさんいらっしゃると思います。 たとえば、台本に書かれていないけれど少し激しい描写がほしいとしたら、それが絶対駄目ということではなく、やはり同意があってこそ初めて成立すると思います。俳優部の皆さんが全然問題なくやりたいということであればまったく問題ない。けれど、もしやりたくないことだったとしたら、それをやらされるというところが問題だと思います。 検閲とか、そういう立場として入っているわけではないということを、映画業界の方にもご理解いただけたらなと思っています。 ―インティマシー・コーディネーターの参加については、どなたからの要望が多いんでしょうか。 浅田:やはり監督とプロデューサーが多いです。ただ、俳優の方々からリクエストがあったり、すごく嬉しいのが、一度ご一緒した方からまた声がかかることですね。 あとはたとえば演出部とか、監督やプロデューサーではないスタッフとご一緒したことがあって、その方々が別の作品でこれは絶対インティマシー・コーディネーターを入れたほうがいいと紹介してくださって連絡いただく場合もあります。そんなときは貢献できたのかなと思えるので、すごく嬉しいです。 ―映画ファンとしても、インティマシー・コーディネーターが入っていることがわかると安心感もあって、当たり前になってほしいなとも思います。より広まっていくには、どんなことが必要だと思いますか? 浅田:いまはあくまで希望があって依頼をいただいているかたちなので、入れたくない人は入れなくても済むシステムではあります。ルール化みたいなものがないと、必ず入れましょうということにはならない気がするんですが、逆に言うと私はインティマシー・シーン以前に本当にたくさんのルールが映画業界には必要だと思っています。 ただ、日本の映画業界はすごく貧乏で、予算が大きい作品も少ない。インティマシー・コーディネーターを入れるということはもちろん人件費がかかるので、予算にも影響します。入れられなくても仕方がない予算であるという状況だと思います。 そのなかでもちろん何とかして入れてほしいという希望はありますし、実際に低予算の作品でも呼んでいただくこともたくさんあります。ただ、お金がすべてではないと思いつつ、やはりそこに予算がかけづらいという問題はあると思うので、インティマシー・コーディネーターがマストになることも大切ですが、映画業界そのものがもっといろんな意味で変わらないといけないなと思っています。
インタビュー・テキスト by 生田綾、南麻理江