「三体はやりすぎた」「消えた33億円はどこへ」…!世界的大ヒットSF小説の担当編集者「逮捕」のウラで蠢いていた「マネロン請負人」
「文学や芸術は市場の奴隷になってはならない」
日本でも『三体』ブームの立役者・姚氏の拘束は、驚きをもって捉えられている Netflix板における最初の文化大革命シーンで、主人公の父親が公開批判され、聴衆の眼の前で紅衛兵に殺される描写が問題視されたという指摘も多い。国際的な著名作家になった劉慈欣の身を案じる声も少なくない。 「表現の自由に当局が立ち入ったとか、姚氏が過去にSNS上で中国共産党を批判する投稿をしたとか、さまざまな憶測があります。でもそれらは表向きの理由にすぎません。商業的に成功した三体の“IP利権”を関係者が上手に捌きれなかっただけです。 今年6月に開催された第26回上海国際映画祭で行われたフォーラムで、中国映画界の大御所チャン・イーモウが、お蔵入りになっている映画化に挑むことが発表されています。利権はしっかり存続しているわけです。 となると、姚氏とその取り巻きが身分不相応な金儲けに加担してしくじったか、あるいは内輪もめを起こした可能性が高いです。彼らを利用してマネロンを企んだ習一派の政敵があぶり出されるかもしれません」(前出・香港中央紙幹部) くしくも共産党政治理論誌『求是』は姚氏の事件をうけ、「文学や芸術は市場の奴隷になってはならない。金銭に汚染されてはならない」とする習近平国家主席の過去の発言を改めて報道している。 「中国ではどんなにすばらしい超越的な思想もぽとりと地に落ちてしまう。現実という重力が強すぎるんだ」 そんな『三体』の一節を彷彿させる展開になりそうだ。
北上 行夫(香港メディア関連会社ファウンダー)