「三体はやりすぎた」「消えた33億円はどこへ」…!世界的大ヒットSF小説の担当編集者「逮捕」のウラで蠢いていた「マネロン請負人」
消えた33億円の穴埋めか
今年4月3日、中国共産党中央委員会傘下の人民網日本語版に〈中国IPの海外進出がもたらす新たなビジネスチャンス〉という見出しが踊っている。 「IP」とは、「Intellectual Property(知的財産)」の略で、キャラクターや物語、デザイン、発明、商標など、法律で保護される無形の資産を指す。とくにエンターテインメント業界では、漫画やアニメ、映画、ゲームのキャラクターや世界観も「IP」と呼ばれ、これらを活用した商品やサービスの開発・販売が進められている。 もちろん『三体』もすでに様々なメディアで展開されており、多角的なビジネスを展開していた。 前出した人民網の記事は、配信10日目を迎えたNetflix版「三体」の視聴者数は累計1100万人を超えたことを報じている。再生回数が93ヵ国・地域でトップ10入り、1話あたりの平均予算が2000万米ドル(約30億円)、全8話で240億円で「Netflixにおいて史上最高額のプロジェクトの一つ」と謳っている。 姚氏の規律違反と違法行為について、海外企業との交渉過程を知る香港中央紙編集幹部に話を聞いた。 「三体はやりすぎました。現場の編集者にすぎない人物(姚氏)を、国営出版社の董事(取締役)にしたのが失敗です。 じつは四川省政府の肝いりで2017年から映画化が進められていたのです。ところが、その製作費2億元(約33億円)の一部がどこか消えてしまっていた。それからです。姚氏の代理人を名乗る人物が何人も香港に訪れるようになったのは。消えた公金の穴埋めに右往左往するのは、中国では日常茶飯事です。彼らはIPにまつわるあらゆる権利を香港で高値で売ろうとしていました」 そう語る香港中央紙幹部が知るかぎり、以下のような権利に数億~数十億円単位の価格がついていたという。 ・ 映像化権(映画化権・テレビ化権) ・ ゲーム化権 ・ 出版権 ・ 舞台化権 ・ 音楽化権 ・ キャラクター使用権 ・ デジタル配信権 ・ 商品化権 ・ プロモーション権 ・ NFT化・メタバース権 「正直、歴史が浅いIPにしては強気な値付けでした。収益化以上にブランドイメージの保護も大切なのに、価格だけが独り歩きしていました。 もっと危ないと思ったのは、IPを買い取った外国企業のプロジェクトに対して、自分たちも投資をさせるよう要求していたのです。その話を聞いたとき、もうこれはIPビジネスの枠を超えているとピンときました。人民元の海外送金、つまり洗銭(マネーロンダリング)です」(前出・香港中央紙幹部)