「推し活」人口1000万人超 無関係と思っている企業に隠れた商機
クリスマスの推し活イベントは大盛況
「例えば、梅田スカイビル(大阪市)はクリスマスの時期にカップルでにぎわう商業ビルです。そこで当社では『推しと楽しむクリスマス』をテーマに、クリスマスフォトスポットをつくり、推しの名前のアクセサリーがつくれる推し活グッズの販売スペースを併設しました。すると『ここでクリスマスの推し活ができる!』と評判を呼び、インスタグラムやX(旧ツイッター)を中心に、数百件におよぶ投稿が生まれ、スカイビルの担当者からも『こんなに人が来ると思わなかった』とお喜びの声をいただきました」(多田氏) クリスマスに実施した梅田スカイツリーの推し活イベントでは、推し活グッズのアクセサリーが大ヒット。クリスマス期間の1カ月で2000円の商品が約1300個売れた。もともと何もない場所に推し活の物販スペースを設けただけで、200万円超えの売り上げを達成したのだ。さらに24年1月には、「推し神社」をテーマにお守りやキーリングなどの商品を販売。こちらも推し活ユーザーに大好評だった。 このほかOshicocoは、推し活グッズ専門店のポップアップストア(期間限定店)も各地で開催している。販売するのはキーリングや痛包(トンバオ)といわれる推し活バッグ、トレーディングカードケースなど。中でも人気商品は「お名前キーリング」「お名前ミニキーリング」「クリアケース&ガラビナ」。各グッズは推しの名前を入れたりできるなど、カスタマイズが可能なものばかり。 例えば、23年の夏、ハンズ新宿店(東京・渋谷)で開催した小規模なポップアップストアは、机2台分のスペースで他のポップアップストアの4倍の売り上げをたたき出した。24年はさらに売り場を拡大し、「推し活Y2k OshicocoPOPUP~OTAKU GAL2024~」を実施。「『たくさんの色、ものの中から自分だけのお気に入りを見つける体験』を大切に展開。まだまだ課題は多いものの、可能性を強く感じています」と多田氏。最近では、2.5次元の歌い手やVTuber(バーチャルユーチューバー)といった新興勢力系コンテンツを推している人々が増えてきており、推し活のジャンルは広がっている。 「アイドルの推しに会うために、自分磨きを始める女性はたくさんいます。イベントに推しの髪色やネイルをする人、エステに通う人、ダイエットを始める人も。海外アーティストが推しの場合、語学の勉強を始めることがありますし、推し活ではプレゼント交換の文化が根付いているため、イベントや公演で会う『推し友』のためにプレゼントを買う人もいます。そうした需要を察知してビジネスを展開するといいでしょう」(多田氏) 推し活に一見関係ないと思えるようなジャンルにも、ビジネスチャンスは潜んでいるのだ。
岸 のぞみ