北半球と南半球、つむじの向きが違う? コイントス実験35万757回 おもしろイグ・ノーベル賞の研究
2024年のイグ・ノーベル賞が米マサチューセッツ工科大学で9月12日(日本時間13日朝)、発表されました。東京医科歯科大の武部貴則教授らのグループが生理学賞を受賞し、日本人のイグ・ノーベル賞はこれで18年連続となりました。ただ、受賞した残る9件の研究も、おもしろいものばかり。研究者たちからいただいたコメントとともに、人口統計学・医学・解剖学・生物学賞を紹介します。(朝日新聞デジタル企画報道部・小宮山亮磨) 【日本の研究、画像で解説】豚がおしりで呼吸! 18年連続、日本にイグ・ノーベル賞
人口統計学賞「長寿で有名な人々、出生と死亡の記録がいい加減な場所に住んでいた」
人口統計学賞を受賞したのは、英ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンのサウル・ニューマン博士の「長寿で有名な人々の多くは、出生と死亡の記録がいい加減な場所に住んでいたことを、探偵のように発見」です。 米国では110歳以上として届け出られている人の数が、出生証明書の提出が必要になった州では7割以上も減ったといいます。 イタリアでは所得や識字率が低く平均寿命が短い地域で、超高齢の人が多いそう。 きわだった長寿の記録には、野菜をたくさん食べたり社会的なつながりが強かったりすることが役立つと言われていますが、論文(プレプリント版)はこのほかに「不正と誤りが主要な役割を果たす」と、日本の沖縄やギリシャのイカリア島なども例に挙げて主張しています。不正には年金の受給との関連があるというお話もあります。 ニューマンさんは、長寿で有名なある男性について、本当の誕生日のほかに「偽造された」ものと「人口学者の誤植」で作られたものがあると、取材に指摘しました。自身の研究が「おもしろくて、面倒くさかったから授賞されたと思いたい」とコメントしてくれました。 今回の受賞は、発表まで秘密にするよう言われました。「ある賞を受けることになったから米国に行く」としか伝えていないので、家族は少し怒っている、のだそうです。
医学賞「痛みを伴う副作用がある偽薬は、痛みを伴わない偽薬よりもよく効く」
医学賞を受賞したのは、ドイツ・ハンブルクのエッペンドルフ大学医療センターのリーヴン・シェンク博士らの「痛みを伴う副作用がある偽薬は、痛みを伴わない偽薬よりもよく効くことを証明」というもの。 「痛み止めの点鼻薬」と言われて使った、実際には何の効果もない偽薬のなかに、唐辛子に含まれる成分カプサイシンが入っていたら、どうなるでしょうか。 偽薬を使った被験者に熱さの刺激を与えて、それによる痛みを評価してもらったところ、カプサイシン入りのときは、偽薬がただの食塩水だったときよりも、痛みを感じにくかったといいます。 「良薬口に苦し」という格言があるが、むしろ苦いと良薬に感じるし、実際に「効果」もある、ということのようです。