為替介入は国を守る戦い「必要があれば制限なくやる」 通貨政策を指揮する神田財務官にインタビュー
円相場は4月、一時1ドル=160円台を付け34年ぶりの円安水準となった。政府・日銀は過度な円安ドル高を食い止めるため、為替介入に踏み切った。一方、介入の効果は一時的で限界もあるとの見方は根強い。 【表】大学生、「子どもほしくない」と回答したのは女子が23.5%、男子が12.1% 「経済的に不安」
為替介入を指揮するキーパーソンが財務省の財務官だ。7月末で退任した神田真人財務官が在任中に共同通信のインタビューに応じ、介入の考え方や、財務官として関わってきた国際会議の舞台裏を明かした。(共同通信=野沢拓矢、飯田裕太) ―歴史的な円安ドル高水準となっています。背景をどう考えますか。 「為替の背景は森羅万象で、これで決まるというのはありません。今のマーケットでは日米の金利差とか金融政策の動向とよく言われています。投資家のリスク許容度も重要ですし、統計で言えば、金融政策の考慮要因にもなる物価動向や雇用環境もあるし、国際収支なども関係あるでしょう。ただ今の相場はこういった要素で説明できず、一番大きな要因というのは、やはり僕は投機だと思っています」 ―国民生活にどんな影響がありますか。 「一般論として、円安だったら輸出や海外展開企業の収益がよくなりますね。ただ他方で輸入価格が上昇すると企業や消費者には負担になります。今は、やはり急激な円安が輸入価格の上昇を通じて、国民生活あるいは事業活動の負担増になるというマイナス面の影響がずっと大きく、懸念を持っています。ゆっくりであれば適応していけるけども、急に変わると家計や企業は対応できません。ですから投機による過度な変動があれば、私としては適切に対応していくしかないのです」 ―今年4月から5月には計9兆円を超える規模の為替介入を実施しました。
「変動相場制なので為替レートは市場で決定されるのは大原則です。ただこの期間はまさに投機的な動きを背景として、過度な変動が見られました。従って為替介入に踏み切りました。その行動によって過度の変動をかなり抑制することができました。有効であったと考えています」 ―その後2カ月ほどで円相場は介入前の水準に戻りました。一時的な効果しかないのではないですか。 「為替介入の意義は、過度な変動に対して安定を図るというのが目的でありますから、特定の水準を維持することを目的にしたことは1回もありません」 ▽国際合意を順守、各国から批判はない ―過度な変動について、財務官は「経済のファンダメンタルズを逸脱した値動き」といった表現をしています。何を意味しているのですか。 「ファンダメンタルズは経済の状態を表す、基礎的条件のことであって、いろいろなものがあります。例えば金融政策、金利、国際収支、物価動向、要するに経済の状態全体ですね。為替相場はこういった経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要ですけれども、投機的な動きを背景にファンダメンタルズでは説明できない過度な変動が生じる場合があります。そうなると、企業、家計に悪影響を及ぼす。従って政府として適切な対応を取ることが求められるわけです」 ―為替介入は相手国の通貨の価値にも影響します。理解は得られているのでしょうか。