解氷で陸地に向かったホッキョクグマは、より多くの病気と戦っている
温暖化で移動が増えた北極の生態系、新しい病原菌の脅威
ホッキョクグマの血液と排泄物を分析した結果、新しい病原菌が見つかった。ワシントン・ポスト紙は23日、地球の平均より4倍早く暑くなっている北極で、病原菌の伝播経路が変わっており、ホッキョクグマも新たな病気にさらされる危険から逃れられないと警告した。 米地質調査局・アラスカ科学研究所の野生動物研究生物学者、カリン・ロード氏は、20年間にわたりホッキョクグマを研究してきた。だが、ここ数年間で研究がさらに難しくなったという。毎年春、アラスカのホッキョクグマの健康状態を確認するために標本を採取するロード氏と同僚たちは、厳しい環境で北極の現地調査を続けている。2017年にも溶け出す北極の環境が不安定で、現場研究を早期に中断しなければならなかった。ロード氏は「私たちは病原菌の伝播経路が北極を含めて変化していることを知っている。ホッキョクグマの健康状態を調べることは、生態系で何が起きているのかを知る良い指標だ」と語った。 この40年間、北極の氷河は過去最低水準に減少した。解氷の面積は毎年米国サウスカロライナ州(8万3千平方キロメートル)の大きさほど減った。大韓民国の面積(10万平方キロメートル)よりやや狭い面積が毎年消えている。そのためホッキョクグマも陸地でより長く滞在するようになり、新しい病原菌にさらされる可能性も高まったと、科学者たちは推論してきた。 血液を採取して5種類の病原菌に対するホッキョクグマの抗体を調査した結果、1980年代と1990年代より現在のホッキョクグマから2倍以上の抗体が見つかった。北極のチュクチ海のホッキョクグマは、30年前よりさらに多くの病原菌に感染する危険性が高いとも言える。近くのボーフォート海とカナダ西部のハドソン湾のホッキョクグマがさらされている病原菌も以前とは異なる。 病原菌にさらされたからといって、ホッキョクグマがすぐに死亡するわけではないが、徐々にホッキョクグマの健康が悪化する原因になると、専門家らは指摘した。北極の外部ではよくある病原菌だが、ホッキョクグマには違う形で影響を及ぼす可能性があるということだ。例えば、猫の排泄物にあるトキソプラズマ症を誘発する寄生虫や、ウサギや犬の伝染病を引き起こすバクテリアに対する抗体も新たに検出された。研究者たちは、餌が病原菌にさらされやすくなったことで、捕食者であるホッキョクグマもこのような病原菌の数値が高い可能性があると説明した。 北極で進んでいる温暖化が恐ろしい理由は、互いに関わることなく暮らしていた種が出会うことになるためだと、ワシントン・ポスト紙は説明する。例えば、2002年に「犬ジステンパー」ウイルスは北大西洋で数千匹のヨーロッパのアザラシを殺した。2年後、このウイルスがアラスカのカワウソから発見されるなど、他の海や他の種へと広がった。海水が混ざったことで、北極に生息していた生物と近隣の亜寒帯気候帯に生息する生物が接触しうる道が開かれたわけだ。 温暖化でアラスカのダニが広がったことで、ダニを媒介とするライム病の病原菌も順に発見された。 病原体生物学者のベッキー・ヘス氏は、死骸の埋もれた土壌に閉じ込められていたバクテリアとウイルスが病気をまき散らす恐れがあるとして懸念を示した。2016年の猛暑でシベリア凍土層が溶けて炭疽菌胞子に感染したトナカイの死骸が露出したことで、少なくとも1人の子どもと数千頭のトナカイが死亡した。ヘルシンキ大学のエカテリーナ・エゾワ研究員は、今後数年内に永久凍土層が溶け、また別の病気が発病する可能性があると予想した。 軍傘下の寒帯地域工学研究所で働くヘス氏は、アラスカで解けゆく永久凍土層に病原菌が存在するかを研究している。もし新しいウイルスや病原菌があれば、それに合う治療法の開発も目指している。ヘス氏の最大の懸念はコレラだ。コレラで死亡した人たちが埋められた土地が溶けているからだ。 チェ・ウリ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )