寛一郎、主演映画『シサム』舞台挨拶で緒形直人の言葉に笑顔「真摯で華があり特別なものを持っている」
映画『シサム』(公開中)の公開初日舞台挨拶が9月13日、TOHOシネマズ日比谷にて開催され、主演の寛一郎、共演の和田正人、平野貴大、サヘル・ローズ、緒形尚人、中尾浩之監督が登壇した。 【写真を見る】ロケ地となった北海道・白糠町長が花束を持って登場!うれしそうに花束を見つめる寛一郎 本作は、江戸時代前期を舞台に、”蝦夷地”と呼ばれた現在の北海道を領有した松前藩が、アイヌとの交易を行っていた史実を基に、アイヌと和人との歴史を描いたヒューマンドラマ。冒頭の挨拶では撮影を振り返り、チームワークの良さに触れたキャスト陣。この日の衣装も打ち合わせなしで全員がブラウン系に偶然揃ったと笑い合う。自然豊かな場所での撮影で、クマ対策も必要だったそうで、「クマ避けをしながら、スタッフ、キャストみんなで作った作品。打ち合わせしなくても同じ色の服になってしまうくらい、森の中で一緒に戦ってきました」との平野の言葉に、全員が揃って頷くなど、一体感を存分に漂わせていた。 「植物、鳥、蜂。あらゆる生命の声が作品のなかで生きています。息吹を、歴史を感じ取っていただきながら観てほしい」と呼びかけたローズは「役柄上、私と緒形さんは(ロケ地)の白糠町で孤独な日々を過ごしていましたが、白糠の町の人に支えられた撮影現場でした」と感謝。ローズのこの言葉に緒形は「映画というものは寝食を共にして、いろいろなことを話し合ってみんなで一緒に作という楽しみがあるのに、僕はただただ孤独で寂しかったです」としょんぼり。 役柄に加えて、撮影日数という物理的な理由もあり、みんなと一緒の時間を過ごすことができなかったこと、撮影が終わっても滞在したいと懇願したが却下されたことなどに触れ、何度も残念がる緒形のぼやきに、寛一郎も観客も大爆笑。楽しみにしていた交流は少なかったが、現場はすばらしかったと座長の寛一郎を見つめ笑顔を見せた緒形が「芝居に真摯に向き合っていて、目線がいい。そして持っている華がある。特別なものを持っているなという印象があります」と共演の感想を伝えると、会場からは大きな拍手が湧き上がり、寛一郎も深々とお辞儀をしてお礼の気持ちを伝えていた。 和田と平野は現地の方たちとの交流が多かったそうで、「お酒も一緒に飲ませていただきました。和田正人は特に楽しんでいて、地元の方とゴルフにも行ってました(笑)」との平野の暴露に対し、和田は「白糠の酒を一番多く飲んでいるのはあなたです!」と反撃。息ぴったりのトークで観客、キャストを笑わせつつ、緒形の「僕は孤独だったのに…」というぼやきを再び引き出し、会場を笑い声でいっぱいにしていた。 企画が立ち上がり、脚本制作時から大事にしていたことは“謙虚であること”だったという中尾監督は「映画で強いメッセージを提示するのではなく、観終わった後に、感じてもらい、自分なりの答えを見つけてくれたらという思いがあります」とコメント。続けて「答えはいますぐに見つからなくてもいい。何年か後にこの映画を観たときの感情を思い出して答えを見つけてもらえたらいいなという思いです。エモーショナルに映画的な体験をしていただきたいです!」と本作に込めた思いを明かした。 イベントには北海道・白糠町長の棚野孝夫氏が花束を手にゲストとして登場。本作について「史実に基づき制作することに意義があります」と強調し、「史実に基づいた映画のおかげで、間違いなく新たな一歩を前に踏み出すことができる。いい映画になったのは、アイヌの神様であるカムイが、企画から今日の公開まで応援して見守ってくれていたおかげです」とニッコリ。中尾監督は改めて、白糠町の協力なしでは映画ができなかったと感謝の気持ちを伝え、深々とお辞儀をする場面もあった。 最後の挨拶で寛一郎は「アイヌを描いた作品ですが、江戸の話でも過去だけのものではない。今日に通じる様々な問題を描いています。その問題を考え、模索して、未来に提示する義務があると思っています。広がっていくといいなと願っています」と呼びかけ、大きな拍手に包まれながら、笑顔いっぱいのイベントをしめくくった。 取材・文/タナカシノブ ※「シサム」の「ム」の正式表記は、小文字表記