「自分でやったほうが早い病」かかる人の“根本原因”。リーダーがこう考えると、組織はダメになる
各スキルの割合は、テクニカルスキルが30%、ヒューマンスキルが50%、コンセプチュアルスキルが20%くらい求められている、と考えておくといいでしょう。 トップマネジメントでは……部下からの断片的な情報をとりまとめ、問題の本質を見極めて判断することが求められます。こうした仕事をするトップマネジメントには、コンセプチュアルスキルが最も重要です。これにはロジカルシンキングやクリティカルシンキングが含まれ、客観的に物事を分析し、原因と結果のつながりを理解することが求められます。
テクニカルスキルは10%程度、ヒューマンスキルも30%程度は必要ですが、最も重要なのはコンセプチュアルスキルで60%くらいは求められている、と考えておくといいでしょう。 ■階層が上がれば、戦う土俵もガラリと変わる 昇進すると、求められるマネジメントも違ってきますし、要求されるスキルも変わります。 最初は、テクニカルスキルを磨くように、と教えられていろいろな実務能力を身につけます。 マネージャーになると、実務はもういいからヒューマンスキルを身につけるように、と言われます。
マネージャーが部長、本部長、取締役とさらに上がっていくと、ヒューマンスキルなんて大事に決まっているじゃないか、トップマネジメントに求めているのは、物事の本質を見極める力、つまりはコンセプチュアルスキルだ、となります。 こうして全体を見るとわかりやすいのですが、実際に会社の中で一段ずつ階層を上がっていく本人は、階層が上がったことで戦う土俵がガラリと変わったことにすぐには気がつきません。そのまま、今までのやり方を続けてしまいがちです。
これは私自身の体験としてもそうですし、私の会社のマネージャーを見ていても、クライアントの話を聞いても、どこでも同じことが起こっています。 しかしながら、自分が周りから求められている役割やスキルが変わっていることに気づかず、古いやり方を続けると、組織の成長を妨げてしまいますから要注意です。主任クラスがマネージャーに昇格した場合に起こりがちな「自分がやったほうが早い病」は、この典型なのです。 ■自分がいた世界の物差しで考えてしまう
人間は、どうしても今まで自分のいた世界の物差しで見たり考えたりしてしまうので、新たな役割ではルールがガラッと変わっていることに気がつきません。 周りの環境が変わったわけではないのに、自分の役職が上がっただけで求められるスキルも変わっているなんて、気がつかないのも当然かもしれません。 せめてもの対策として、マネジメントレベルに応じて必要なスキルが変わることを知識として知っておきましょう。 役職が上がるたびにその変化を意識するようにすれば、こうした“よくある行き違い”を、多少なりとも防ぐ一助となるはずです。
あべき 光司 :プロフェッショナルコーチ/税理士・EMP税理士法人代表