生まれつき「悪玉」のLDLコレステロール値が高く血管が詰まりやすい「家族性高コレステロール血症」…早期発見で心筋梗塞を予防
自覚症状乏しく
堺市のA子さん(50)は、生まれつき「悪玉」のLDLコレステロールの値が高く、血管が詰まりやすい遺伝性の「家族性高コレステロール血症(FH)」を患う。2歳頃に診断されて以降、複数回の心臓手術や投薬などの治療を続けて命をつないできた。
コレステロールは脂質の一種で、体内で過剰になると肝臓に取り込まれ、体外に排出される。FHの患者はこの機能に不具合があることで動脈硬化が進行し、致命的な血管の詰まりを引き起こす。
A子さんは、発症に関わる遺伝子を両方の親から受け継ぎ、症状が重い「ホモ接合体」のタイプだ。
一方、片方の親から遺伝した「ヘテロ接合体」のタイプは300人に1人の割合でみられる。未治療のままだと健康な人よりも15~20年早く心筋 梗塞こうそく を起こすとされるが、症状が軽く、病気に気づいていない人が多いことが課題だ。
FHは自覚症状に乏しく、見落とされやすい。LDLコレステロールの値(血液1デシ・リットルあたり180ミリ・グラム以上)や親族の発症状況、肘やひざにできる黄色の塊や、アキレス 腱けん の厚みなどから診断する。
A子さんの主治医で、FHの診療指針を作成する大阪医科薬科大の 斯波真理子特務教授は「心筋梗塞などで救急搬送されて初めて、FHと気づくケースも多い」と指摘する。
新たな点滴薬
治療は、脂質を抑える食事や、コレステロール値を抑える「スタチン」などの薬が中心だ。効果が不十分な場合は、血液を体外の装置に循環させてLDLコレステロールを除去する「アフェレシス療法」を行う。
A子さんは週1回、アフェレシス療法を受けるほか、今年、ホモ接合体タイプに保険適用された点滴薬「エヴキーザ」を月1回投与。「ようやくコレステロールが正常値に収まるようになった」と話す。
斯波特務教授は「FHは早期の診断・治療で確実に予後が良くなる。家族や自分のコレステロール値を気にしてみてほしい」と呼びかける。(中田智香子)