〈アップルウォッチ発表〉時計としての機能やファッション性をどうみるか 篠田哲生
アップルウォッチが「時計」に与えるインパクト
しかしながら、米国の市場調査会社、Strategy Analyticsが予想した“1540万個”というアップルウォッチの年間出荷台数に対しては、時計メーカーもインパクトを持って受け止めているのも事実である。 既に嗜好品としての腕時計を楽しんでいる人の場合は、左腕はお気に入りのモデルで埋まっているのでさほど影響はないだろう。しかしこれまで腕時計に興味がなかった人々がアップルウォッチを手にする可能性は高い。そこでスマートフォンをごそごそと鞄から引っ張り出さなくても、手首の上にある機械で現在時刻がわかるという新しい経験をすることになる。つまり腕時計の便利さを知ることで、より本格的な腕時計へと興味を広げてもらう事を期待しているようだ。 さらにアップルウォッチの登場によって、デジタル技術と腕時計の融合が進むとみている人も少なくない。スイス時計ブランド「フレデリック・コンスタント」のCOOアレッタ・スタース・バックスは、「スイスで作られるクオーツウォッチの30~50%は、数年後にはデジタルデバイスと連動するだろう」と語っている。 事実、アップルウォッチとは異なる方式のスマートウォッチは、既にいくつか発売されている。 先述のフレデリック・コンスタントからは、クラシックデザインのドレスウォッチの内部に活動量計センサーを搭載し、スマートフォン側で情報を読み取るモデルが発表された。このセンサーは超省電力のため充電は不要である。モンブランからは、時計のストラップにデジタルデバイスを取り付けてスマートフォンと連動させる「e-ストラップ」が登場。カシオでは数年前から、スマートフォン側で時刻修正やアラーム設定を行う時計を作っている。さらに日本のインディペンデント系時計ブランド「ヴェルト」では、一つのケースの中にクオーツウォッチとデジタル表示を同居させ、スマートフォンから送られるメタ情報(情報に関する情報)を表示できるようにしている。