〈アップルウォッチ発表〉時計としての機能やファッション性をどうみるか 篠田哲生
アップルウォッチのファッション性
デザインに関してはマーク・ニューソンが関わっているため、評判は悪くない。しかしアップルウォッチの容姿は、彼がデザインを担当している時計ブランド「アイクポッド」の「マナティー」にそっくりなので、手放しで褒める人は少ないようだ。 ウェアラブルなガジェットをファッションとして売り出すというのも、見慣れた風景だ。時計業界ではすでに30年前に、スイスのカジュアルウォッチ「スウォッチ」と日本のタフウォッチ「G-SHOCK」をファッション化させて売り込むことに成功している。両者とも時刻を知るという行為ではなく、その時計を着けること自体に価値があるというライフスタイルを認知させ、社会現象にまでなっている。 さらに時計メーカーからすると、デジタルウォッチ全般に対する評価が、そもそもそれほど高くない(時計ではなくガジェット扱い)ので、「アップルウォッチ、なにするものぞ」という姿勢なのである。
時計としての課題
しかし、何よりも時計メーカーがアップルウォッチを評価しない理由は、バッテリー容量に関する問題だ。アップルでは公式にバッテリーが18時間しかもたないことを発表している。通話などもっと積極的に使えば、それ以下と言う事になる。わずか1日さえもバッテリーが持たず、頻繁な充電が必要となるモノを、“Watch”と呼んでいいのだろうか?
時計とは
そもそも時計の歴史は、駆動力を持続させるための苦労の連続だった。機械式時計の場合は、限りあるスペースに、なるべく大きくて強いゼンマイを収めることで持続時間を伸ばし、安定したトルクを長時間続けることで高精度を実現した。電気仕掛けのクオーツウォッチの場合は、省エネ回路や効率的な太陽発電システムを研究開発することで、小さな時計に中に様々な機能を組み込んできたという歴史がある。 いくら精密に作られた腕時計も、長時間動き続けなければ存在意義はない。つまり頻繁に充電すればいいだろうと考えるアップルウォッチは、時計メーカーの考え方とは正反対にあるのだ。