「高齢者はやせた人のほうが肥満の人より死亡率が高い」90歳医師が訴える低栄養の怖さ
90歳を迎えた今も現役医師として週4日高齢者施設で働いている折茂肇医師。近年、高齢者の低栄養が問題となっており、折茂医師は「高齢者は栄養バランスよく食べる以前に、欠乏しがちなエネルギーやたんぱく質を意識的にとるようにしなければならない」と語る。 【動画】90歳現役の折茂肇医師の回診の様子とインタビューはこちら 折茂医師は、東京大学医学部老年病学教室の元教授で、日本老年医学会理事長を務めていた老年医学の第一人者。自立した高齢者として日々を生き生きと過ごすための一助になればと、自身の経験を交えながら快く老いる方法を紹介した著書『90歳現役医師が実践する ほったらかし快老術』(朝日新書)を発刊した。同書から一部抜粋してお届けする(第7回)。 * * * 長らく高齢者医療に携わり、私自身も超高齢者となってたどり着いた答えとして大きく3つがある。健やかに老いていくためには「病気と仲良くすること」、「食べること(体の維持)」、「役に立つ意識(生きがい)」が大切ということだ。 ここでは「食べること(体の維持)」について述べよう。多くの人が健康のために気をつけることの一つが食生活であり、世の中には「これを食べると健康にいい」「これを食べると病気になりやすい」といった情報が出回っている。教科書通りに言えば「栄養バランスの良い食生活を送りましょう」ということになる。 しかし、高齢者で問題になっているのは「低栄養」だ。 「低栄養」とは、エネルギーとたんぱく質が欠乏し、健康な体を維持するために必要な栄養素が足りない状態をいう。高齢になると、ものをうまく食べられなくなったり、消化機能が落ちたりすることで、栄養や水分を十分にとれなくなる。先に述べたような喪失体験の影響による食欲低下や食事摂取量の減少に起因することもある。 ■知らず知らずのうちに低栄養状態に 厚生労働省が発表した「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、65歳以上の低栄養傾向の者(BMI≦20kg/㎡)は、男性12・4%、女性20・7%となっている。また、85歳以上では、男性17・2%、女性27・9%。年齢が上がっていくにつれ、知らず知らずのうちに低栄養状態に陥ってしまうのだ。