阪神に訪れた“困ったとき” 「コーチ未経験」でも藤川球児新監督の電撃招聘が「必然」と考えられる理由
競争が求められる新フェーズに入った
黄金期を熟知するレジェンドが「再出発」のかじ取りを託された。 10月14日、阪神は来季から藤川球児氏を第36代監督に任命すると発表した。複数メディアの報道によれば、契約年数は3年。今季限りで勇退する岡田彰布監督のイズムを継承しつつ、2軍を含めた若虎の育成が求められる期間となりそうだ。 【動画】長打力は半端ない!佐藤輝明が放った圧巻の満塁弾シーン 「もし困ったときはいつでも呼んでください。すぐに駆け付けます」 これは矢野燿大監督の率いた20年に現役引退を決した藤川監督が甲子園で行われたセレモニーで語った言葉だ。この時から熱心な虎党たちは、日米通算811登板で、245セーブを挙げたレジェンドが、いつかもう一度、縦じまのユニホームに袖を通すのだと心のどこかで、ぼんやりと思い浮かべていたはずだ。 とはいえ、藤川監督がコーチ経験をふまずに“大役”を任されるとは、おそらく誰も予想していなかった。事実、「藤川球児」がトレンド入りしたX上でも不安視する声は散見された。 そんな周囲の喧騒はともかく、球団首脳陣にとっては、今がまさに「困ったとき」なのだろう。23年に発足させた岡田監督の第2次政権下でチームは18年ぶりリーグ優勝と38年ぶりの日本一を経験。ファンにとっても充実感のある時を過ごしたが、今季は一転。春先から苦闘が続いたのも事実だ。 8月下旬まで首位に立っていた広島の失速もあって、最終的に2位に滑り込んだ。それでも、勝負所で投打の歯車が噛み合わない時期は少なくなかった。客観的に見て、新戦力の台頭による競争が求められる新フェーズに入ったと言える1年だった。 また、今オフの阪神は多くの主力がFAイヤーを迎える編成事情もある。 投手では青柳晃洋、打者では不動の四番を務めた大山悠輔をはじめ、「扇の要」であった梅野隆太郎と坂本誠志郎の両捕手、さらに左右の代打の切り札でもある糸原健斗、原口文仁も権利を持つ。あくまで仮定の話だが、彼ら全員がFA行使を決断した場合には争奪戦が必至。引き留め交渉次第では一気にチームが崩壊しかねない状況にもなる。