国内株価の最高値更新! 新NISAの投資先選定でも参考にしたいGPIF運用機関が選ぶ優れた統合報告書
「優れた統合報告書」として最多の6機関から評価を得たのは「伊藤忠商事」だった。伊藤忠商事は、GPIFが発表を開始した2018年から毎年「優れた統合報告書」として評価され、7年連続で選定された。運用機関が評価するポイントは、「企業価値向上に向けたストーリーがわかりやすい」「CEOメッセージも相変わらず迫力ある」「持続可能な価値創造のためのモデルが明確に定義されている」など。
次に、「日立製作所」が5機関から評価された。日立製作所も7年連続で「優れた統合報告書」に選ばれている。評価のポイントは、「CFOが情報開示WGを統括し企画・制作に全社がコミットしている体制がよく表れている」「事業の成長をもたらす仕組みについての説明が充実」など。そして、同じく5機関から評価されたのが「アサヒグループホールディングス」。6年連続での「優れた統合報告書」に選定された。「インパクトの可視化、人的資本の高度化、TCFDとTNFDの統合的対応など、先進的な取組みがなされている」などと評価された。
「改善度の高い統合報告書」は、複数機関から選定されたのは2機関からに止まり、評価がばらけている。その理由は、選定企業の規模は、大型企業が24社、中型企業が60社、小型企業が16社と、中小型企業が全体の76%を占めており、複数の運用会社がカバーしきれていないということも要因だろう。逆に、それほど小型企業も含む多様な企業が統合報告書の作成に力を入れるようになっているということもできる。
統合報告書の作成は上場企業の間に根付いてきているが、その報告書の内容が、株価にどのような評価として現れるだろうか。今回、5機関以上から「優れた統合報告書」を作っていると高く評価された3社の株価推移をTOPIX(東証株価指数)と比較した。比較期間は、政府から「コーポレートガバナンス」の強化が言われ始めた2013年を起点とし、「コーポレート・ガバナンスコード」が導入された2015年、そして、2017年7月にGPIFが、3つのESG指数を採用してパッシブ運用を開始した「ESG投資元年」を経て、2024年1月末までを振り返った。