「魚は頭から腐る」を地で行く韓国の医師大規模スト、エリート劣化は日本も同じ
韓国での研修医の集団ストライキが世界中で話題となっている。我が国のマスコミは勿論、4月4日、米『ニューヨークタイムズ』紙も長文の解説記事を掲載した。なぜ、韓国でこんなことが起こったのだろうか。本稿では、その背景について解説したい。
10万人当たり医学部卒業生数はOECDで「下から3番目」
韓国と日本の医療状況は似ている。韓国の合計特殊出生率は0.78(2022年)で、日本の1.26(2022年)を下回る。高齢化率(65才以上人口の割合)は17.5%(2023年)で、2030年には24%に達すると考えられている。日本の29.1%(2023年)ほどではないものの、高齢化の進行は深刻だ。 高齢化が進めば、医療需要は増加する。ところが、韓国の医師数は少ない。人口1000人あたりの医師数は2.6人(2022年)で、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均(3.7人)を大幅に下回る。トルコ(2.2人)、メキシコ(2.5人)、チリ(2.9人)、ポーランド(3.4人)と並ぶ医師不足国の一つだ。 少子高齢化により、地方都市は衰退する。大都市圏に人口が流入し、地方の過疎化が進む。韓国の人口は約5160万人だが、約960万人(約19%)がソウル市内に住んでいる。日本の人口に占める東京23区の人口の割合は約8%だから、韓国の一極集中は日本の比ではない。 医師偏在は深刻で、ソウルの人口1000人あたりの医師数は3.5人で、東京都とほぼ同レベルだ。一方、ソウル近郊の京畿道は1.8人と約半分だ。 韓国の地方都市の医師不足を改善するには、医師の絶対数を増やすしかない。ところが、当面、改善されそうにない。それは韓国の医師養成数が少ないからだ。OECDの「Health at a Glance 2023」によれば、韓国の人口10万人当たりの医学部卒業生数は7.3人で、イスラエル(6.8人)と日本に次いで下から3番目だ。トップのラトビア(27.3人)の約26%に過ぎない。 ちなみに、日本は7.2人で、下から2番目だ。高齢化率を考えれば、日本の方が事態は深刻だが、そのような議論は国内からは全く出ない。「医師は不足していない。偏在が問題である」という厚労省の見解を踏襲しているのだろうが、国際感覚からはかけ離れている。 財務省は4月16日に財政制度等審議会財政制度分科会に提出した資料の中で、医学部定員について、「大幅な削減が必要になる」と主張した。こうなると、最早、道化としかいいようがない。