生成AIスマホ、28年までに3.8万円以上の機種で9割に
香港の調査会社カウンターポイントリサーチはこのほど、2028年までに生成AI(人工知能)搭載スマートフォンの世界出荷台数が7億3000万台を超え、2024年における推定出荷台数の3倍超になるとの予測を発表した。2028年までに、価格が250米ドル(約3万8000円)を超えるスマホの9割が生成AIに対応すると分析している。 ■ 「ハードウエアの進化」から「パーソナル化」へ スマホ業界はこれまで、より大きな画面、より高速なプロセッサー、より多くのカメラといったハードウエアの進化に注力してきた。だが、今後は、よりインテリジェントで適応性が高く、パーソナル化されたユーザー体験の提供へとかじを切る。 カウンターポイントによれば、生成AIを活用したスマホのパーソナル化は、従来の枠を超えたものであり、「ハイパーパーソナライゼーション(超パーソナル化)」とも呼ばれる。こうしたハイパーパーソナライゼーションは既に(1)高価格帯スマホ機種で始まっており、今後は技術の進化と共に(2)上位価格帯、(3)中位価格帯、(4)低価格帯機種へと広がっていく。 ■ 生成AIは高価格帯、上位、中位機種の順で普及 まず、短期的(2024~2025年)に、価格が600米ドル(約9万1000円)超の高価格帯機種が生成AI搭載スマホ出荷台数のほぼ8割を占める。 生成AIスマホは当初、こうした高価格帯機種に集中する。しかし、中期的(2026~2027年)には、上位価格(400~599米ドル、約6万1000~9万1000円)や中位価格(250~399米ドル、約3万8000~6万1000円)にも広がっていく。2026~2027年における生成AIスマホ出荷台数の約30%は、上・中位価格帯が占めるとカウンターポイントはみる。
■ 低価格帯機種にも対応させる「生成AIの民主化」 そして、最後に来るのが低価格帯機種だ。スマホ業界はハードウエアとソフトウエア両面で技術革新を進めており、生成AIを低価格帯で実現させたいと考えている。カウンターポイントによれば、これは「生成AIの民主化」と呼ぶことができる。 例えば、米半導体大手のクアルコムは、生成AIに最適化した中・上位のプロセッサーを開発している。大規模言語モデル(LLM)を手がけるIT(情報技術)大手各社は、低価格機種でも利用できる軽量言語モデルを開発している。軽量ながらも高い性能を実現するため、様々な最適化技術を活用している。 これらの施策により、2027~2028年には250米ドル以下のセグメントで、生成AIの導入が加速し、出荷台数の増大につながるとカウンターポイントは予測する。 ■ 「早期の買い替えを促すまでには至っていない」 同社によれば、当初、生成AIだけでは魅力的なユースケースが欠ける。このため、AI搭載というだけでは買い替えを促すことはできない。しかし状況は技術の進歩と共に変化する。メーカー各社がAI機能を洗練させ、その成果を積極的にアピールすることで、消費者への訴求力が高まる。 別の調査会社である米IDCも同様の分析を行っている。IDCシニアリサーチディレクター、ナビラ・ポパル氏は「(生成AIは)まだ需要に大きな影響を与えたり、早期の買い替えを促したりするまでには至っていない」と指摘する。 同氏は、「生成AIは今後数年間で(スマホの)ユーザー エクスペリエンスに革命を起こすと考えられるが、消費者の認知度を高め、『必須』と思わせる機能を導入するためには、さらなる投資が必要だ。そのような機能が登場すれば、多くの消費者に受け入れられ、誰もが待ち望むスーパーサイクルが生まれるだろう」とも述べている。
小久保 重信