秋山郷の見事な紅葉と、秘境が育んだ文化。旅する人を魅了するアケヤマの新作アート【大地の芸術祭 2024】
今回で第9回展となる「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」。「人間は自然に内包される」という基本理念を基に、この地の厳しくも豊かな自然の恵み、そしてこの地で生きる人々とともに生まれたアートを実際にその土地を巡りながら鑑賞するこのトリエンナーレは毎回大きな反響を呼んでいる。 【画像】山本浩二《胸中山水 秋山郷図》ほか、アケヤマの美しい自然やアートの写真をすべて見る この2024年もさまざまな視点、アプローチから、新潟県、越後妻有地域を深く感じるためのアートがいくつも誕生した。 中でも注目なのが津南エリアにできた「アケヤマ―秋山郷立大赤沢小学校―」だ。日本でも有数の秘境とも言われ、独自の文化を発展させてきた秋山郷はその独特なカルチャーから生まれたアート作品はもちろん、秋には鮮やかな紅葉が山一面を覆い、旅の候補としてもふさわしい。
「人間の生活の力を再び手に入れるための学校」
JR飯山線「津南駅」より車で約40分、深い山中、渓谷美の中に秋山郷はある。通信や交通が困難かつ、豪雪地帯であったことから秘境とも呼ばれ、古くは義務教育免除地にも指定されていた。 1924年に悲願の学校として生まれたのが大赤沢小学校。しかし、少子高齢化の影響で2021年に廃校。その歴史を引継ぎ生まれ変わったのが「アケヤマ―秋山郷立大赤沢小学校―」、今回の大地の芸術祭の展示会場にもなっている。 「アケヤマ」とは秋山の語源でもあり、境界線を明確に引くことのできない山を意味する「明山(あけやま)」のこと。その秋山郷と同じように、住民、研究者、アーティスト、そして私たち来訪者に開かれたこの空間で新たに「人間の生活の力を再び手に入れるための学校」としてさまざまな取り組みを行っていくという。
秋山郷という土地への理解が深まる《続秋山記行編纂室》
秘境・秋山郷での生活や暮らしには多くの人が魅了され、民俗学的な見地からはもちろん、ジャーナル的な見地などさまざまな形で紀行文が著述されている。特に江戸時代後期に鈴木牧之が書き記した『秋山記行』はベストセラーにもなっている1冊だ。 そんな秋山に伝わる生きるための根源的な生活技術や土地の感覚を記録し、語り継いでいくのが《続秋山記行編纂室》。 アケヤマに訪れたなら、まずはここから鑑賞し、秋山郷への理解を深めるのがおすすめだ。 知識として秋山郷への理解を深めたら、秋山郷を山そのものとして感知してみよう。山本浩二が描く《胸中山水 秋山郷図》は山本自身が感じた秋山郷のすがた。作家が会場にいる時には木炭で来場者が絵を描くこともできるそう。この土地を訪れたあなたの胸にはどんな秋山郷が去来するのか。 壁一面の白黒の秋山郷は雪に覆われたような印象を受ける。色が無い世界だからこそ感じる大自然の静謐さ、雄大さに心が震える感覚になる。