倉庫街がアートの中心地に変貌! 富士山の見える「丘」が観光資源に!?……地域ブランディングの切り札は“名付け”
方言はここにしかない「宝」だ
ローカリティの持つ底力に光を当てるという点で、星野リゾートの星野佳路代表が話していたことが面白かった。ある青森の宿の再建に向けて従業員の皆さんにアンケートをとった時のこと。集まったのは「素晴らしい山海の珍味を出せる」「海が美しい」「丁寧なサービス」といった、どの宿とも差がつかない意見ばかりだった。そこで「逆に何がダメか」を聞くと、「接客で方言が出てしまうから恥ずかしい。申し訳ない」という声が上がる。 そこで星野さんは言った。まさにその方言こそがここにしかない「宝」だと。そこから星野リゾート青森屋が生まれ、今ではその方言を学び、「あおもリンガル」になることを目指す人が数多く訪れる名宿になったわけだ。 若い世代や世界の人々から見れば、「方言はダサい」どころかその土地の文化を味わえる「宝」だ。それを見つけ出し「売り物」に変えた手腕を聞いて、さすが星野さんだと僕は膝を打った。まさに、「BIG&FAST」な思想が生んだ「地方より都会が勝っている」という偏見を覆し、「SMALL& SLOW」の観点で日本の価値を再発見した最高のケースだと思う。 スターバックスの「47JIMOTO フラペチーノ®」も「SMALL&SLOW」な発想から生まれたものだ。47都道府県それぞれの味を一つひとつつくることが、どれだけ非効率なことか。それは一度でもチェーンビジネスをやったことがある人なら痛いほどわかる。でも彼らはやってのけた。それはJIMOTOの魅力をJIMOTOで楽しむというローカルの価値を本気で信じていたからに他ならない。 「大衆から小集へ」と先にも記したが、まさに日本の「小集」である地方の力は素晴らしく、しかもそれをあわせれば世界を動かす大きな力になる。それはただ規模の拡大を求めたスケールではなく、スモールな力を信じて束ねることで得られる力だ。 ここからも、日本の価値を再認識できるブランディングが見えてくるのではないだろうか。
小西 利行/ライフスタイル出版