いまや安定した大手企業化している新車販売業! この先は「ベンチャー」が登場する可能性大
新車ディーラーは「スタートアップ」企業的な側面をもっていた
世のなかでは「スタートアップ」という言葉が使われて久しい。筆者はついつい「ベンチャー」というものと混同してしまうのだが、調べてみるとベンチャーとは既存のビジネスモデルをベースに新しい創意工夫を凝らしたものであり、スタートアップとは、まったく新しいイノベーションを起こして進めるビジネス……ということらしい。 【画像】日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025大賞受賞車の画像を見る そう考えると、新車販売ディーラーの創成期はスタートアップに近いノリで広がりを見せたものと考えている。 1960年代に上映された、当時の人気俳優などを起用したヒット映画のなかには自動車メーカーを舞台にした作品が意外に多い。当時は「モータリゼーション」などとされ、一般家庭がマイカーの所有を始めた時代。 調べてみると、1966年にデビューした初代トヨタ・カローラの価格は当時のサラリーマンの平均年収分に相当していたとのこと。それまでの日本人の間では、「自動車を自分個人で所有する」というのは想定もしていなかったことだったが、このあたりで「年収分で買える」レベルまでに近づいてきた。 自動車自体は、すでに商用車というカテゴリーにおいてはそんなに珍しい存在ではなかったが、「乗用車」でしかも「マイカー需要」というものは、当時ではまさに自動車需要の「イノベーション」でもあり、いわゆる一般小売を本格的にはじめ、魅力的な新型乗用車を世に送り出していた自動車メーカーは当時、「最先端の業界」として、映画の舞台としても取り上げられるようになったものと考えている。 それでも令和のいまに比べれば、乗用車としてラインアップされる車種は全体でも数えるほどしかなく、自動車の販売主体はトラックやバンなどの商用車であり、乗用車といってもハイヤーやタクシー、社用車などのニーズがメインとなっていた。ただし、それでも自動車の個人所有というものは急速に増えるようになっていて、新車の売り方も小売りに合わせた体制確立が急務となり、新車販売ネットワークの全国的な構築が本格的にはじまった。 お隣の韓国では、まだまだメーカーの組織に新車ディーラーが組み込まれ、メーカーが直接運営している店舗もあると聞くが、日本では全国各地の地元有力企業や地元の名士をオーナーとした、「地場資本系ディーラー」の整備がおもに進められた。多くは地元で整備工場を経営していた流れから新車販売会社を設立していたようだが、それまで自動車とは縁のなかった企業が新車販売に乗り出すケースも少なくなかった。 これは、日本がいまのような自動車大国になる以前の話であり、海のものとも山のものともいえない新車販売という、当時では新しいビジネスにチャレンジする姿勢が、まさにいまどきのスタートアップ企業に近いものと、筆者は感じているというわけだ。