空き家を〝地域活性の財産〟に まちを再生させた3つのアイデア
【再生のアイデア③】息吹き返す、シャッター街 島本センター(島本町)
大阪府島本町を走る阪急京都線「水無瀬駅」の改札を出た先に商店街「島本センター」の入り口がある。30店舗の小さな通りだが、平日の午後は高齢者や親子連れを中心に人通りが絶えない。だが、2年前まではシャッター街だった。 近年の同町はマンション建設が活発。人口が増加する恵まれた状況にあるが、旧住民と新住民との交流が求められるようになった。 綿島光一さんが、同センターでラーメン店を開業する知人に「スペースが空いているので何かやらないか」と誘われたのは2022年の初め頃だ。人通りは少なかったが、改札のすぐ横でテナント料も安く興味を持ち、無人のギョーザ販売店「水無瀬餃子」をオープンした。SNSで呼びかけると、利益を出せる程度に売り上げを確保できた。だが、どうにも人通りが少なく、それ以上は売り上げを伸ばせないことは明白だった。 理事長就任後はイベントを企画し、折り込みチラシやSNSで集客に奔走。ハロウィーンの時期には空きスペースを風船で埋め尽くし、撮影スポットとしてアピール。昨年末の「ガラポン大抽選会」ではチラシとLINEで抽選券を発行し、1800人を集めた。その間、空きスペースに出店する店が増え始め、自身も新たな店を開店。昨夏ごろには、すべてのスペースにテナントが付いた。
「商店街に人を呼ぶ最初の課題はクリアした。島本センターに店があることを多くの人に思い出してもらえた」と綿島さん。 次の課題も見えた。イベントの時ほど、店ごとの売り上げに差が開く。「商店街が継続して人を集めるには強い店が増えなければ。店が軌道に乗るまでは経営を相談できる顧問が必要。実績のある経営者にリアルな助言を得られる体制を整えたい」(綿島さん) 島本センターの建物を所有するのは島本町商業協同組合だが、土地は阪急電鉄。同社の元にも、にぎわいを取り戻す商店街のうわさは届いていた。「駅利用客や近隣住民にとって利便性が高まり、商店街がにぎわうことは駅や街のバリューアップにもつながる」(広報部・正岡裕也さん)