空き家を〝地域活性の財産〟に まちを再生させた3つのアイデア
【再生のアイデア②】開業後も継続して集客支援 美想空間(大阪市)
大阪市の難波や大阪港、奈良県大和郡山市で空き家を借り上げ、地域一帯の不動産価値を上げるエリアリノベーションを実践する美想空間(大阪市)。鯛島康雄社長は複数の空き家の借り手となり、テナント発掘も自ら行う。個人事業主が多いテナントを支えるため、開業後も集客面を中心にサポートする。 どのような工事にいくらかけるかは、借り手の存在を見据えて決めていく。「この場所(立地、条件)なら、このテナントにいくらで貸せる。空き家を借りるにはいくらかかる。ならば工事費用にいくらまでかけられる、と考える」(鯛島社長) さらに、どんな事業なら、その場所で経営しやすいかを企画者として見定めている。「例えば、エステを始めた人が現れたら、近くにネイルショップができるようになる。周辺にも女性向けのテナントができていく。一つ軸ができたら、そこから広げる」(鯛島社長) テナント集めは、地域住民からとは限らない。大阪市港区築港でビールを醸造するブルワリーを始める人は、奈良県宇陀市から移住してきた。大和郡山市では、三重県から地元に帰ってきた人もいる。リスクを背負って他地域から出店に挑む人の背中を押すには、地域の魅力や、手頃な賃料だけでは足りない。 そこで、鯛島社長は自治体やメディア、地域の大手企業との連携も重視する。イベントの後援を取り付けたりして集客と同時に、地域店舗の集客支援につなげる。 同社が港区で運営する複合施設「クラシカレッジ」は、まちづくりを推進する立場で同区と地域協定を結んだ。大和郡山市のシェアアトリエ「オカマチ荘」でも同市との連携を積極的に行う。こうした活動をメディアに取り上げてもらい、住民に対する認知度や信用を築いていく。
期間貸しでテナント育成
テナントの事業支援という側面では、小スペースを期間貸しする役割も大きい。同社がクラシカレッジで運営するシェアキッチン「カリキチ」は、五つのテナントに3週間単位で貸し出す。月替わりの店を楽しみに来店するのは地域住民だ。 借り手はプロの事業者だけでなく、自分の店を持ちたいと考える人も。 「その地域でやりたいビジネスを実現できるよう受け皿をつくるのが僕らの仕事」と鯛島社長は話している。