愛くるしいけど実はケンカっ早いヒゲペンギン、近づくとまずフンを発射する
過酷な子育ては「マイクロスリープ」で対処、南極地方では最も数の多いペンギン
ヒゲペンギンは、あごひげをつけたような顔の模様から、その名が付けられた。南極地方では最も数の多いペンギンで、彼らはここで巨大なコロニーを作り、繁殖活動を行う。 【動画】愛くるしいけどケンカっ早いヒゲペンギン 海氷域よりも北で冬を過ごしたヒゲペンギンは、10月下旬から11月初旬にかけて営巣地に戻り、毎年ほぼ同じ相手と繁殖を行う。彼らがコロニーを作るのは、サウスサンドウィッチ諸島やサウスシェトランド諸島、そして南極大陸の海岸線に広がる氷結していない岩場だ。 こうしたコロニーには、驚異的な数のヒゲペンギンが集まる。最大のコロニーはサウスサンドウィッチ諸島の無人島、ザボドフスキー島にあり、そこには120万組余りのつがいが生息している。また、サウスシェトランド諸島のデセプション島にあるベイリー岬のコロニーでは、10万組以上が暮らしている。
繁殖と営巣
ヒゲペンギンのメスは小石を円形に積み上げた巣の中に、通常2個卵を産む。抱卵はオスとメスが数日おきに交代して行う。卵が孵化するのはおよそ37日後。 ヒナはその後数週間を巣の中で過ごすと、巣を出てヒナだけで「クレイシュ(共同保育所)」を作る。まだふわふわで灰色の綿羽に覆われたヒナたちが、集団で身を守るための集まりだ。生後2カ月ごろになると綿羽が抜け、大人の羽毛が現れて海で泳ぐことができるようになる。
脅威
ヒゲペンギンの主な餌はオキアミだ。海での一番の敵はヒョウアザラシだが、陸上では卵やヒナを狙うトウゾクカモメやオオフルマカモメなどの鳥類も敵になる。また、ヒゲペンギンはある特殊な脅威にもさらされている。火山活動だ。 2016年にはザボドフスキー島で、ちょうど年に一度の換羽の時期に火山が噴火し、コロニーの大半が灰に覆われてしまった。換羽とは古い羽毛が抜けて新しい羽毛に生え変わることだ。古い羽毛は防水性に乏しく、完全に生え変わるまでペンギンたちは海に入れない。 数世紀に及ぶアザラシ漁や捕鯨の影響でオキアミが増えた結果、ヒゲペンギンの数も20世紀半ばに増えた。しかし現在、ゆっくりとではあるが数を減らしている群れもある。また、観光客が繁殖中のペンギンに近づきすぎないように規制も設けられている。
ナショナル ジオグラフィック 日本版編集部