24年の世界M&A、好調スタート後に失速-金利や地政学面で不透明感
(ブルームバーグ): 今年早々に相次いだ大型案件でも、企業の合併・買収(M&A)の持続的な回復には結びついていない。慎重な中央銀行や地政学的な不安で勢いがそがれている。
ブルームバーグの集計データによると、世界のM&Aの増額は年央段階で約1兆4000億ドル(約225兆円)。前年同期比で14%増だが、1-6月(上期)の10年平均と比べると3000億ドル余り少ない。
グッゲンハイム・セキュリティーズのM&A担当グローバル責任者エリック・ルトコスケ氏は、「今年は今のところまずまずだが、あらゆる兆候からみて、もっと素晴らしい状況になるはずだった」とコメント。「大半のマクロ指標は今年、実際に良くなっているだけに、減速が見られるのは少々驚きだ」と述べた。
1-3月(第1四半期)は超大型案件が相次いだ上、過去10年余りで最も積極的な利上げサイクルを進めた中銀が利下げに転じるとの期待が高まった。しかし、そうしたシナリオが実現しなかったことでバンカーらは現実を直視。米金融当局は6月、インフレ目標を辛抱強く管理するため、今年の利下げは1回にとどまるとの見通しを示した。
JPモルガン・チェースの北米M&A部門共同責任者、ベン・カーペンター氏は、「年内に利下げが始まるかどうかはまだ明らかでない」と述べ、「方向性や経済全体への意味合いを理解するまでは、まさに様子見モードだ。静観している人がいるのはそのためだ」と分析した。
バンカーによると、借り入れコストの上昇と株式相場の堅調は評価額を巡る企業の合意を難航させ引き続き交渉の妨げになっている。
エバコアのシニアマネジングディレクターで米国投資銀行部門共同責任者のナビーン・ナタラジ氏は、「買い手と売り手の評価のミスマッチは縮小しているが、完全に埋まったわけではない。資本は利用しやすくなっているが、まだコストは極めて高い」と述べた。
ブルームバーグの集計データによれば、エネルギー産業のM&Aが活発化しており、同セクターのディール総額は今年、40%強増加した。