元自衛官の女性が定年後、“BL専門”の漫画喫茶を開業したワケ「男性どうしが自由に愛しあえる世の中に」
性別関係なく読んでほしいから腐女子ではなく「腐民」
もう一つ、ぢゅあんの画期的な点は、性別による入店規制がないこと。現在日本に数店あるBL漫画喫茶は基本、女性のための店なのだ。 「女子と男子のカップルもいらっしゃいます。私、“腐女子”という言葉が好きじゃないんです。BLは女が読むものだと決めつけている気がして。私は異性の友人の8割がゲイですし、性別の区切りを設けたくないんです。それに、うちには18禁が一冊もないので年齢制限もありません。成人向けのハードな漫画は、私が一人で電子書籍を楽しんでいます(笑)」 年齢や性別の制限なく、誰もが楽しめる場所としてBL漫画喫茶を開いた彼女。つけたキャッチフレーズは「大阪腐民の森」だ。
「なぜ男どうしの恋愛は不幸にならなきゃいけないの?」
とぢこさんのBLへの目覚めは、小学生時代にまでさかのぼる。 「小学3年生から腐民でした。友達の家にあった竹宮恵子先生の『風と木の詩』と山岸涼子先生の『日出処(ひいづるところ)の天子』を読んで衝撃を受けたのがBLに興味を抱いたきっかけです。それ以来、“耽美派”(たんびは)と呼ばれた少年愛の要素がある漫画を読み漁るようになりました。“やおい”という言葉もまだない時代でしたね」 日出処の天子を愛するあまり、法隆寺に何度も通っては男性どうしのランデブーに想い巡らせた。おかげで飛鳥時代限定だが、日本の歴史にとても詳しくなったという。さらに女性向けの男性同性愛専門誌『ALLAN』(アラン)や『JUNE』(ジュネ)にも触手を伸ばしているから早熟である。 「ただ、当時のBLって、ほぼすべてがバッドエンドだったんです。禁断の愛に触れて堕ちてゆく結末ばかり。それが子ども心に胸糞悪かった。『なんで男どうしが愛しあうと不幸にならなきゃいけないの? もっと自由に恋愛ができる世の中になればいいのに』って小学生の頃から憤っていましたね」 中学校へ進学以降、関心は現実の美少年へと拡がってゆく。 「本田恭章さん(日本のヴィジュアル系のパイオニアとして語り継がれるギターヴォーカリスト・俳優)に夢中になり、その後、hydeさん(L’Arc~en~Ciel)の追っかけをするようになりました。熱がまったく冷めないまま現在に至ります」 ぢゅあんが開店した1月29日は、実はhyde氏の誕生日。この日を開店記念日にしようと、必死で間に合わせたという。