世界遺産登録に難クセ 「佐渡金山」を突破口に「日本統治不法論」を認めさせたい韓国
慰安婦が「日本の同志」では困る
慰安婦問題がいっこうに解決しないのも「植民地支配不法論」が背景にあります。慰安婦が強制連行でないのなら、当時の朝鮮人の少なくとも一部は、不法のはずの大日本帝国に協力していたことになる。だからこそ、韓国政府は強制連行だったと認めろと日本政府に執拗に迫ってきました。 2014年、『帝国の慰安婦』を書いた朴裕河(パク・ユハ)世宗大教授が元慰安婦から名誉棄損で訴えられたのも、その意味では当然でした。朴裕河教授は「慰安婦は日本軍と同志的関係にあった」と書いた。それが事実であろうとなかろうと、「植民地支配不法論」の立場から言えば抹殺したい本と筆者だったのです。 実は、朝日新聞が慰安婦問題を大々的に報じた1991年の段階では韓国政府は相当に困惑しました。当時は戦争を体験した韓国人が数多く存命中で「強制連行などなかった」というのが彼らの常識だったからです。 その頃、筆者は韓国の高齢者から難詰されたことがあります。日本人によるキーセン観光が残っていた時代です。「韓国人は簡単に身体を売る」との偏見を強化するために朝日新聞が慰安婦を持ち出したと怒ったのです。 もっとも、韓国政府としては「慰安婦」に火を付けられた以上、「強制連行だった」ことにしてもらわないと立場がない。結局、河野洋平官房長官の「慰安所は日本軍が関与した」との談話を引き出すことに成功しました。
「韓国民が納得できる謝罪を」
――こんな見え透いた罠に日本がはまるでしょうか? 鈴置:韓国はあきらめないと思います。日本側に呼応する勢力がいるからです。「日本の良心」を自負する朝日新聞は社説でさりげなくですが、繰り返し日本側の出資を訴えています。 ・目先の利害や日本国内の狭量な主張に縛られず、将来を見すえた大局的な判断が必要だ(「徴用工問題 日韓は解決へ誠意示せ」=2023年4月23日)。 ・徴用工問題を「済んだ話」と考えるのではなく、日本として過去を直視する姿勢を示し続けることが大切だ。関係強化につなげるためにさらに何ができるか。知恵を絞らねばならない(「徴用工問題 関係強化に資す努力を」=2024年3月7日)。 自民党の閣僚経験者にも、韓国へのさらなる謝罪を訴える人がいます。石破茂衆議院議員です。東亜日報とのインタビュー「韓日ほど共通課題が多い国はない…両国首脳はとりあえず会え」(2021年11月24日、韓国語版)で以下のように語っています。 ・韓国の国民が納得できる謝罪が何かに考えを及ぼすことが重要だ。なぜ、日韓関係がうまくいかないのか、韓国の国民が何を要求しているのか、きちんと理解しないと、また同じことを繰り返すことになるだろう。 韓国人は石破茂氏が首相になったら、と心待ちにしているに違いありません。「韓国の要求を理解する」という日本の首相が登場したら、「植民地支配を不法と認めろ」と要求すればいいのですから。 鈴置高史(すずおき・たかぶみ) 韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『韓国民主政治の自壊』『米韓同盟消滅』(ともに新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。 デイリー新潮編集部
新潮社