世界遺産登録に難クセ 「佐渡金山」を突破口に「日本統治不法論」を認めさせたい韓国
玉虫色の文言で棚上げ
――韓国の最高裁は文在寅政権に協力するために「植民地支配不法論」を持ちだしたのですか。 鈴置:それだけではありません。韓国社会全体の「日本の植民地になったことなどなかったことにしたい」という願望に応えたのです。 2018年の新日鉄住金判決の元となったのが2012年5月の最高裁の差し戻し判決です。この判決文を書いた裁判官は「建国の心情で書いた」と周囲に語ったと報じられました。建国の心情――植民地だった過去を完全に否認し、新たな建国の歴史をつくるとの意気込みです。 21世紀に入り韓国社会では「日本を超えた」との意識が高まるとともに、植民地の過去を完全に否定できなかった日韓基本条約を見直そう、との声があちこちで起きました。 国交正常化交渉の際に韓国側は1910年の日韓併合条約が不法だったと日韓基本条約に盛り込むよう要求したのです。しかし、日本側が拒否したため「already null and void(すでに無効である)」との表現とすることで決着しました。 日本側は1965年の基本条約締結時点で無効になったと読み、韓国側は初めから条約は存在しなかったと見なす仕組みです。両国政府はそれぞれの国民にそれぞれの立場でもって説明しました。まさに、玉虫色の文言による妥協でした。 でも、少し考えれば韓国側の解釈は不自然です。併合条約が不法で初めから存在しなかったのなら、「すでに無効」との文言をわざわざ盛り込む必要はないからです。
「徴用工」は「応募工」
韓国メディアも「植民地支配不法論」を全面的に応援しています。そもそも、新日鉄住金に賠償を求めた朝鮮人労働者4人は徴用工ではなく、自身の希望で入社した応募工でした。だが、韓国メディアは「徴用工」と呼んだのです。「不法な植民地支配下の不当な強制労働」とのニュアンスを込めるためです。 日本メディアまでが「徴用工」と呼び始めたので、西岡特任教授が安倍首相に進言。日本政府は「旧朝鮮半島出身労働者」という単語を使うことを決めました。 一方、韓国では「徴用」という言葉を下手に使うと、「徴用」という制度の存在――日本の植民地支配の合法性を認めたと見なされかねない、との指摘が出ました。戦時に自国民を「徴用」するのは合法です。 そこで韓国紙は「強制」を冠して「強制徴用」との単語を使うのが一般的になりました。他国民を「強制」労働させるのは国際法違反になるからです。