世界遺産登録に難クセ 「佐渡金山」を突破口に「日本統治不法論」を認めさせたい韓国
父親を守った朴槿恵
ただ、「徴用工」裁判は朴槿恵(パク・クネ)政権下では止まっていました。最高裁が「植民地支配は不法」と判決を下し、それを日本が認めれば国交正常化当時の朴正煕(パク・チョンヒ)政権は外交努力を尽くさなかったことになってしまう。朴槿恵大統領とすれば、父親の業績に傷を付けるリスクは避けたかったのでしょう。 もちろん、次の文在寅政権にそんな懸念はありませんでした。それどころか朴正煕大統領が象徴する保守を貶めるためにも、日本との関係を悪化させるためにも裁判所に日本を攻撃させる必要があったのです。 就任3カ月後には春川(チュンチョン)地裁所長だった左派の金命洙氏を最高裁長官に任命しました。最高裁判事を経験せずに長官に就任する異例の人事でした。「徴用工」裁判をさっそく再開した最高裁は2018年10月30日、新日鉄住金に慰謝料を支払うよう命じたのです。 日本政府は1965年の国交正常化の際に交わした請求権協定に違反すると強く反発、「国際法の違法状態を是正するよう」求めました。同協定第2条では「請求権に関する問題が(中略)完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」とあるからです。 そのうえ「締結国及びその国民(中略)すべての請求権であって、同日[署名日]以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もできないものとする」と念を押してあるのです。
約束破りを見越した日本
交渉当時の外務省幹部によると当初、日本側は個人に対して支払う方式を提案しました。だが開発資金への転用を狙った韓国側が、政府が一括して受け取りたいと希望しました。 結局、日本は韓国の事情を汲んで受け入れましたが、個人が「自分は貰っていない」と蒸し返すことが十分に予想されたため、「日本に対する請求権はこれ以上、行使できない」とくどいほどに明文化したのです。 「徴用工」を巡る韓国側の弱みはまさにこの事実にあったのです。韓国政府も2005年8月、「徴用工問題で日本企業に賠償を求めるのは困難である」との見解を表明しています。 そこで最高裁はこの条文をすり抜けるために詭弁を弄しました。判決で「請求権協定は不法な支配に対する取り決めではない」と一方的に断じたうえ、それゆえに植民地支配による精神的苦痛への賠償はまだなされていない、との屁理屈を展開したのです。 もっとも、韓国政府も「出るところへ出れば負ける」と分かっているのでしょう、日本が請求権協定で定められた仲裁委員会の設置を求めても無視しました。 2018年10月、検察は「徴用工」裁判を遅らせた罪で元裁判官を逮捕しました。2019年2月には、梁承泰(ヤン・スンテ)前最高裁長官を「徴用工」裁判に介入し遅延させたとして起訴しました。文在寅政権は「植民地支配不法論」を受け入れない人たちを根絶やしようと、最高裁長官経験者までも収監したのです。