<高校野球>目指せ憧れの「お兄ちゃん」 平田、部員減に歯止めかける野球教室 21世紀候補校
3月19日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場32校が1月24日、選考委員会で決まる。そのうちの3校は、困難な環境の克服や地域貢献など他校の模範となるべき要素を選考条件に加えた「21世紀枠」で選ばれる。20回目を迎える21世紀枠。全国9地区の候補校から中国・平田(島根)を紹介する。【新井隆一】 【写真特集】歴代の「21世紀枠」出場校 投げたボールが的に当たると、子供たちが無邪気な笑顔を見せた。2019年12月15日、出雲ドーム(島根県出雲市)で開かれた野球教室「出雲子ども野球フェスタ」(島根県高校野球連盟主催)。子供に野球に触れてもらう目的で開かれ、平田の野球部員は他校選手らとともにコーチ役で参加した。 園児から小学3年までが対象の午前中には、野球未経験者を含めて300人超が参加。スポンジボールを投げたり、テニスラケットや手作りバットで球を打ったりした。保科陽太主将(2年)は「楽しいと言ってくれた子もたくさんいたので、ぜひ野球をしてほしい」と期待する。 同校野球部は数年前から野球の普及活動に取り組む。選手4人の「普及班」を中心にオフシーズンに数回、同校グラウンドに園児らを招いたり、保育園に出向いたりして野球体験会を開いてきた。新聞紙を丸めてカラーテープを巻き付けたバットを手作りして体験会で使うなど、安全面にも配慮してきた。県高野連によると、同フェスタではその手作りバットを使うなど、同校の普及活動のノウハウが生かされたという。 1916年創立の県立校が普及に力を入れる背景には、少子化や野球人口減少がある。昨秋の島根県大会出場39校の約6割で、ベンチ入り選手数が20人に満たなかった。同フェスタの約2週間前から準備してきた保科主将は「練習もしないといけないけど、もう一回、野球が盛んになってほしい思いでやっている」と説明する。 チームは昨秋、県大会準優勝、中国大会8強。植田悟監督(48)は「教えた子供が上手になることで、選手もうれしさを覚える。同様に選手同士でもアドバイスが増えるようになり、チームの雰囲気が良くなった」と指摘する。21世紀枠の候補校選出は補欠校だった前回大会に続いて2年連続3回目で、今回の候補校9校で唯一の複数回の選出。コーチ役の地元の「お兄ちゃん」たちが甲子園で躍動すれば、子供たちの憧れにもなる。