大注連縄10年ぶり新調…コロナ禍越え氏子ら手作り
広島県三原市八幡町の御調八幡宮を飾る大 注連縄しめなわ が、新春に向けて10年ぶりに新調された。コロナ禍などで制作が中断していたが、60、70歳代が中心の氏子たちが協力しながら手作りした。同宮は「住民の結束が強まり、地域が元気になってくれれば」としている。(佐藤行彦) 【画像】拝殿に大注連縄を取り付ける氏子(広島県三原市で) 同宮は、769年に和気清麻呂の姉・広虫(ひろむし)が神をまつったのが起源と伝わる地域を代表する古社。桜や紅葉の名所としても知られる。拝殿の大注連縄はこれまで、3~5年で新調。2014年の張り替え後、18年に予定していた制作は、西日本豪雨により市内で広域に被害が出たため延期に。その後も新型コロナの流行で見合わせが続いた。
これまでの制作で指揮を執っていた人も近年亡くなり、伝統が途絶えてしまうのではないかと危機感を覚えた氏子たちは、10年ぶりの大注連縄作りを決定。今年9月に同町本庄地区の田んぼ5アールで育てていた餅わらを刈り、1週間かけて天日干しした。11月下旬に氏子約30人が集まり、わらを編み込んだコモを芯に巻き付け、注連縄の形に整えた。 今月1日には、氏子たちが社殿をすす払いした後、青みが残る長さ約8メートル、重さ100キロという大注連縄を協力して拝殿まで運び、張り替え作業を行った。注連縄が長すぎて軒からはみ出し、1メートルほど切らなければならないハプニングもあったが、2時間余りで無事に付け終えた。 張り替えを指揮した名誉総代の河原幸造さん(96)は「前回の作業の中枢にいた人がほとんどいなくなり、手間取る場面もあったが、おおむね予定通りにできた」と 安堵あんど した様子だった。 地域は少子高齢化が進み、伝統の継承は大きな課題だ。今回、建築士の氏子が、残された資料を基に大注連縄の設計図を作り直したという。また、4月には県無形民俗文化財の「花おどり」を住民が中心となり9年ぶりに奉納するなど、取り組みが活発になっている。 桑原国雄宮司(78)は「伝統行事は一度途絶えると復活させるのが難しく、注連縄づくりの細かな製法なども確認できたのは大きい。地域で協力しながら次の世代に受け継いでいきたい」と語った。