【マイナーチェンジ】改良したBYD ATTO3に試乗。どことなく伝わるヨーロピアンな雰囲気は乗り味にも現れていた。
最後に急速充電を試す。充電性能の課題は残るが電費の良さでカバーできる
200km近くのドライブを終え、最後に急速充電の性能を試しました。ATTO3の急速充電における最大受入能力は85kWと意外にも控えめな数値で、近年増えつつある150kWの急速充電器をぜひとも使いたいところでしたが、ATTO3が受け容れてくれる量はその6割程度と少し物足りないのも事実です。ただしバッテリー容量がそもそも比較的小型ゆえ、充電すべき電力量もその分少なく済むということを考慮すれば実用上問題はないとも言えます。 充電前のSOC(充電残量)は48%、航続可能距離は204kmと表示されており、そこで30分間の急速充電を行いました。ATTO3の最大受入能力である85kWの出力いっぱいで急速充電をした結果、SOCは92%まで充電され、航続可能距離は423kmとなりました。 この結果を見て、筆者はBEVも十分に実用できる領域に入ってきたと感じました。30分で200km以上分の充電ができるのであれば、遠出に出かける際の安心感も高いものになります。また、カタログ上の航続距離である470kmから実際の航続可能距離の乖離がかなり少ないことにも驚きました。すなわち電費性能の良さを証明する結果となりました。とあれば、「少し航続距離短いかな?」と思われたカタログ値の470kmという数値はATTO3の実用上における「ちょうど良い」落としどころなのかもしれません。
圧倒的な訴求力はないかもしれないが、試してみる価値は大いにある
さてアップデートされたBYD ATTO3についてご紹介しました。日本でも親しみやすいボディサイズ、先進的な装備、ユニークなインテリア、ヨーロピアンな乗り味、電費性能の良さ・・・など、ATTO3の魅力は大変高いと感じる結論に至りました。 一方で、内装のデザインを超えるサプライズはほかにないのも事実で、乗り味もユーティリティもライバル勢を圧倒する性能ではなく、あくまで平均的と言えます。けれど、そこに決定的なネガティブポイントがないのも、これまた事実。すなわち全方位において「ちょうど良い」仕上がりというわけです。 ただし日本市場では、どうしても中国車というニューカマーに対して敬遠しがちなユーザーが多いことも事実で、バカ売れ必至的なセールスは望めないでしょう。けれど、一度先入観を取り払ってATTO3に触れてみると「BEVを買うなら、こういう選択肢もアリかもな」という気持ちになると思います。実際に試乗して装備や実用性を試したのち、450万円というプライスタグを見ると、なんともお買い得なモデルだと驚くはずです。 今はちょっと選べない・・・という方も少なくないと思いますが、この先長い目で見てBYDがユーザーからの「信頼性」を獲得した暁には、日本市場でも脅威になるかもしれないと個人的に感じました。 そうは言っても百聞は一見に如かず。さまざまなイベントや、BYDディーラーなどで実施される試乗体験にて、興味がある方はぜひとも触れていただきたいと思います。(写真・根本貴正/PHOTOS Takamasa Nemoto) 【BYD ATTO3 主要諸元】 ●全長:4455mm ●全幅:1875mm ●全高:1615mm ●ホイールベース:2720mm ●車両重量:1750kg ●モーター種類:交流同期電動機 ●モーター:フロント×1基 ●最高出力:150kW(204ps)/5000-8000rpm ●最大トルク:310Nm(31.6kgm)/0-4433rpm ●トランスミッション:1段固定式 ●駆動方式:FWD ●バッテリー総電力量:58.56kWh ●一充電走行距離(WLTCモード):470km ●タイヤサイズ:235/50R18 ●車両価格:4,500,000円
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