悠仁さま「東大志望説」はフェイクニュースだった 成城大教授・森暢平
◇雑音気にせず真理の追究を 他にも、大学で研究する有識者が、「学習院に進むのが筋」「皇族の学問は権利ではなく義務」「日本史を学ぶべき」「生物学より帝王教育が重要」などと主張した。学問を究めることの意味を分かっている人たちが、時代錯誤の主張を繰り返すのはどうしたものか。 デマの連鎖は、8月10日から開始された署名集めサイト「change.org」での東大進学反対署名につながる。署名の趣旨は「悠仁さまが東大の推薦入試を悪用し、将来の天皇として『特別扱い』で入学されることは象徴天皇制を根底から揺るがす」であった。約1万2500筆が集まったところでプラットフォーム側により削除された。ただ、署名集めは、別のサイト「Voice」で再開され、11月4日までに7000筆以上集まり、東大に提出しようとしたところ、受け取りを拒否された。 繰り返すが、悠仁さまの進学先候補で、東大の名前が挙がったことはない。23年6月に筑波大の研究室を訪問したときから、筑波大生物学類を志望した。一般入試を視野に受験勉強を続けていたが、2学期早々、評定平均が4・3を上回り、概評が「A」となることが確定したので、高校から同じ学類に2~3人までが推薦できる学校推薦型に出願することにした。 これとて推薦=即合格ではなく、生物学と英語の実力が問われる小論文試験と面接を経なければならない。今年の倍率は発表されていないが、昨年、生物学類を学校推薦型で受験した者は59人で、合格者は20人(倍率2・95倍)。学力が高い生物好きが集まる試験だから難関である。 悠仁さまにとって重要なのは生命の真理に近づくことで、大学名なるブランドはどうでもいい。学べる環境が整っていればいいのだ。「真理の探究」は人間本性に基づく欲求であり、時代を超えた普遍的価値を持つ。こうした理念を理解しない反知性的な報道やネット言説など「雑音」は気にせず、悠仁さまらしく、学問の道を突き進んでほしい。(以下次号)
■もり・ようへい 成城大文芸学部教授。1964年生まれ。博士。毎日新聞で皇室などを担当。CNN日本語サイト編集長、琉球新報米国駐在を経て、2017年から現職。著書に『天皇家の財布』(新潮新書)、『天皇家の恋愛』(中公新書)など サンデー毎日12月29日号(12月17日発売)には、他にも「全国を歩くエコノミスト 藻谷浩介が石破首相に提言」「年の瀬に生まれた競馬名勝負列伝 有馬記念激走史」「目覚めスッキリな快眠ルーティン ぐっすり眠れるコツ!教えます」などの記事も掲載しています。