悠仁さま「東大志望説」はフェイクニュースだった 成城大教授・森暢平
◇「農学部」進学説は幼少時代からあった ところが、雑誌メディアの多くは、悠仁さまが東大を目指し、それを望んでいるのは母親、紀子妃であるという物語を紡いできた。2012年、悠仁さまがまだお茶の水女子大付属の幼稚園生だったとき、『週刊朝日』(12年9月21日号)が「『脱・学習院』で目指せ東大⁉」という記事を掲載。翌年、小学校1年生になったときも、紀子妃は「学業を究めて東大農学部に進学してほしいなんて夢もお持ち」(『女性セブン』13年9月26日号)と報じられた。 臆測は、悠仁さまの筑波大付属高校進学が決まってからも繰り返される。同高校は毎年東大に30人前後を合格させる進学校だからであろう。「東大農学部には応用昆虫学や昆虫遺伝学などの有名な研究室がある」から、紀子妃の「『東大計画』はより現実味を帯びることになる」(『週刊文春』22年1月27日号)というストーリーが繰り返された。 高校3年生になってからも、東大農学部進学情報は盛んに報道され、トンボ論文に加え今年8月に京都で行われた国際昆虫学会議でポスター発表をしたことを根拠に「東大への道のりは、この夏で十分整った」(『週刊新潮』24年8月15・22日号)と断定された。具体的には学校推薦型入試を利用して、東大農学部を目指すとされたのである。 「嘘も100回繰り返すと真実になる」という言葉はナチスの宣伝相ゲッべルスが言ったとして参照される。フェイクニュースも最初は噂(うわさ)として報じられたが、各誌が同じことを繰り返すなか、いつしか「事実」に転じていく。 困ったことに噂は有識者たちのコメントにより信憑(しんぴょう)性を増してしまった。例えば、政治学者の原武史は「『東大進学問題』ですが、一般入試で受験して合格すれば何の問題もないでしょう。しかし一般市民が中に入れない赤坂御用地をフィールドにした『トンボ論文』による推薦入学ですと(中略)本当の実力が分かりづらくなる」と論じた(『AERA』24年9月9日号)。東大受験という前提自体が間違っているのだから罪深い。