女子ボクシング新王者、タイトルのこだわり「あまりない」 WBOアトム級の鵜川菜央さん
グローブをはめて選手同士が殴り合うボクシングは長い間男性のスポーツとのイメージを持たれていたが、今やファイトマネーをもらうプロとしてリングに上がる女性も少なくない。アマチュアでも女子ボクシングは2012年のロンドン大会からオリンピックの正式種目となり、開幕したパリ大会でもパンチを交わす。プロとして着実に実力を着けて、5戦目でアジアパシフィックの王座に就いた28歳の鵜川菜央選手に世界タイトルやランキングへのこだわりを尋ねると「あまりない」と意外な答えが返ってきた。それでは、どのような気持ちでリングに上がるのだろうか。(共同通信=山崎恵司) 【写真】五輪、性別騒動のボクサーが勝利 対戦の女子選手、46秒で涙の棄権 異例の事態
▽就職活動の傍らで 東京・後楽園ホールで今年6月14日、「ビクトリーヴァ」と銘打った女子の熱戦が繰り広げられた。世界ボクシング機構(WBO)アジアパシフィックの女子アトム級で優勝したのが鵜川選手だ。 1ラウンド2分で8ラウンドを戦い抜き、2-1の僅差で判定勝ち。プロ5戦目にして初めてチャンピオンベルトを巻いた。通算の戦績は5戦5勝となった。 鵜川選手は兵庫県姫路市出身。小学校から中学、高校まではバレーボール一筋で、関西の大学ではスポーツ新聞部に所属した。さまざまなスポーツを取材し、担当した競技の一つがボクシングだった。 大学3年で部活を引退後、就職活動の傍らで「運動をしたくて」大阪市内のボクシングジムに通い始めた。 最初に取り組んだのはフィットネスだった。だが、約半年が経過した大学4年の時にボクシングにのめり込むきっかけが訪れる。 ▽初めてのスパーリングでぼこぼこに 鵜川選手は当時のことを「プロを目指している女の人がジムにいて、『スパーリングの相手になってほしい』と誘われて、やってみたら、めちゃめちゃぼこぼこにされた」と振り返る。
「めちゃ悔しかったけど、その次の週に『もう1回お願いね』と言われて、あんな思いはしたくないと思ってガードとジャブを意識して(対戦を)やろうと決めた」ところ、前回とは全く異なる展開に。「それが『あっ、面白い』と思って、(フィットネスではない)実戦のボクシングにはまった」 ▽日本バレーボール協会に就職 2018年3月に大学を卒業して就職したのは日本バレーボール協会だったが、東京に引っ越して真っ先に取り組んだのが「ボクシングジムを探すことだった」と明かす。 「東京に来た時から、仕事をしながらボクシングを続けようと思っていた。動きたい、楽しい、練習したいというのが一番だった」。東京で最初に入ったジムにはプロボクサーも所属しており、「練習を続けているうちに自分もプロになろうとだんだん本気で思うようになった」と話す。 ▽名門ジムに移籍 プロのデビュー戦は2022年4月26日だった。鵜川さんは「相手もデビュー戦だったけれどもめちゃ強くて」と振り返る。試合は2-0となり、3人の審判のうち1人はドロー(引き分け)と判定したほどの接戦だった。 奮起して臨んだその後の3試合は、いずれも3-0の判定勝ちを収めた。その間の2023年1月に「強い選手がたくさんいて、有名なトレーナーも多くいたので」と三迫ジムに移籍した。