【毎日書評】人の話を最後まで聞けないのには理由があった。だからこそ「聞く力」が強みになる!
「なにを話したらいいのかわからない」とか、「会話しているときに生まれる“間”が怖い」とか、他にもいろいろあるでしょうが、いずれにしても人とのコミュニケーションは難しいものです。 『聞くチカラ』(マツダミヒロ 著、すばる舎)も、そのことで悩む方のために書かれたものだそう。注目すべきは、著者が冒頭で結論を明かしている点です。 人と充実したコミュニケーションを取るためには、 上手なアドバイスも、流暢な話し方も、必要ありません。 相手の話をしっかり聞く。まずはそれだけでいいのです。 (「Introduction」より) 人は会話で相手と心を通じ合わせるもの。そのためコミュニケーション能力が求められるわけですが、それは誰もが発揮できるものではありません。そこで本書では、「世の中でもっともシンプル、かつ、カンタンに心を通じ合わせるコツ」として「聞く」ことの重要性を説いているのです。 「listen」(聞く)を並び替えると「silent」(静かな)になります。 これは偶然ではありません。 聞くときに、忘れてはいけない姿勢を教えてくれているのです。 (「Introduction」より) 具体的には、「相手を見て、自分の表情を意識して、静かにうなずく」こと。このシンプルな聞き方を身につければ、ほかになにを変えることもなく適切なコミュニケーションを実現できるというのです。 きょうはそんな本書のなかから、第1章「『話す人』よりも『聞ける人』がうまくいく」に焦点を当ててみたいと思います。
なぜ「聞けない」のか?
人が自分の話を聞いてほしいと望む生き物であることが、さまざまな研究によって実証されているのは有名な話。また自分のこととして考えてみても、それは明らかなのではないでしょうか。 ところが、それはなかなかできないことでもあります。いったいなぜなのでしょうか? 人が話をするときのスピードは1分間に約400字、人が話を聞けるスピードは1分間に約800字と言われています。 つまり「話す能力」と「聞く能力」には処理速度として2倍の差があり、話す能力に対して、聞く能力には余裕があります。 この状態だからこそ、話を聞きながら、「ほかのことを考えることができてしまう」のです。(36ページより) そのため、自分では聞いているつもりでも、じつは集中できていなかったりするわけです。また著者によれば、「同調性バイアス」の影響もあるようです。いうまでもなく、まわりの人の行動や考え方を無意識に取り入れ、同じように振る舞ってしまう特性のこと。 つまり相手が一方的に話をしている状態が続くと無意識に違和感を抱き、「私も話さなければならない」という衝動にかられ、話し始めてしまうというのです。そのため、“どちらかが話を聞いているだけ”という状態を維持しづくなるということです。 また、人が自分の話をして気持ちよくなりたいと思うのは、その先に「共感してほしい」という思いがあるから。心のどこかで「共感=聞いてもらうこと」と思い込んでいるため、その共感を得ようと必死に話をしてしまうというのです。(35ページより)