「災害二度と」平穏祈り 7月豪雨・県内被災地の年の瀬
土砂や濁流が流れ込み、集落を覆った、あの日から5カ月がたった。庄内、最上の両地域を襲った昨年7月の豪雨災害の被災者の中には、少しずつ元の暮らしを取り戻している人もいる。穏やかな一年になりますように―。復旧はまだ途上だが、被災した人たちは希望を胸に、家族らと大みそかを過ごし、新年を迎えた。 ■戸沢・蔵岡地区 「みんなでどこに行こうか」。久しぶりに、楽しそうな声が家の中に響いた。戸沢村蔵岡で、母と妻、長男の大智さん(37)と暮らす横山雅生さん(65)の家には、茨城県下妻市から帰ってきた次男孝也さん(36)の家族も集まり、8人で大みそかを迎えた。「ここで次男夫婦や孫を迎えてやりたい」。横山さんは、この思いを胸に浸水被害に遭った自宅を修繕した。 度重なる水害で被害を受けている蔵岡地区では、集団移転が検討されている。ただ横山さんは「家は建てたばかり。移転は考えられなかった」という。それでも安心できる場所で暮らしたいと、いまは集団移転を受け入れている。ただ年末年始は、わが家で過ごしたかった。仮設住宅には入らず、自宅は11月中旬に修繕を終えた。
横山さん宅の居間には、いつも一緒に暮らす4人と次男の家族がそろった。外では次男の子どもで、孫の朔士(つかさ)さん(12)と、あおいさん(7)が雪遊びをする元気な声。話題は、この休みにどこに出かけるか。「いつもの正月の光景だ。家族や友人をいつでも迎えられるようにしたかった」と横山さん。ただ、集団移転に不安がないわけではない。「家のローンは残っているし、補償がどれくらいになるのか」と話した。 同村名高の仮設住宅に入る蔵岡地区の区長山崎昇さん(73)は今年、妻和子さん(69)と2人きりで年末年始を過ごす。例年なら5人の息子家族が交代で訪れるが、仮設住宅は狭く、集まることはできない。「少し寂しい気もする」と山崎さんはつぶやいた。平穏な一年でありますように―。横山さんも、山崎さんも、新年に向けた思いは同じだ。 ■酒田・大沢地区 土砂が取り除かれた家の玄関先に門松が置かれていた。酒田市大沢地区は被災前の姿に戻りつつあるが、土砂が流れ込み、住人がいなくなった家もある。同地区の後藤正一さん(73)の自宅は床上浸水などに遭い、1週間ほど前に修復を終えたばかりだ。なんとか、わが家で5人と愛猫1匹の家族全員で、年越しができる状態にこぎ着けた。