東京オートサロン、最熱のクルマ祭り 「楽しさ」を共有 東京オートサロン(上)
自分好みのカスタマイズからプラウドな愛着へ
プロフェッショナルなショップの技術を目の当たりにできるのは、東京オートサロンならではの魅力だ。「丁寧に塗り上げられた塗装は間近で見ると、違いが歴然。クルマ好きの心が高ぶる」(福井氏)。各ブースでは展示車のつややかなボディーに艶然と視線を遊ばせる来場者が珍しくない。 そうした各地の匠たちと言葉を交わすチャンスがあるのも、ファンを引き寄せる引力になっている。各ショップは解説セミナーの機会を設けていて、人気の枠は早々に埋まってしまう。大手完成車メーカーの新モデル発表とは異なる、ショップとの近さは東京オートサロン独特の温かみをもたらしている。 どの商品でも「自分らしさ」が求められるようになる中、所有する車のカスタマイズはプラウドな愛着につながる。別ブランドへの移り気な乗り換えを防ぐ意味からメーカー側もオプションやドレスアップを重んじるようになってきた。自分好みのカスタマイズに役立つパーツやショップと出会える東京オートサロンが来場者を増やすのも道理だろう。 ジャパンモビリティショーが隔年開催なのに対して、東京オートサロンは毎年1回、1月に開かれる。年の初めという頃合いでもあり、「年に1度のお祭りという感覚で楽しみにしている来場者が多い。移り変わるトレンドを映す意味でも毎年開催の意味は大きい。業界関係者の間では賀詞交換会も兼ねているようだ」(福井氏)。 今回のブースではレースカーを持ち込んだところもあった。ホンダのF1復帰や国内初のフォーミュラE(電気自動車)開催など、モータースポーツ界の話題が相次ぐ中、実車の迫力はファンの目を輝かせていた。屋外ではデモンストレーション走行が披露され、本物の迫力を印象付けた。 来場者のキャラクターは当初に比べて「割とライトにちょっとだけカスタマイズを楽しみたい層が増えた」(福井氏)という。外国人や女性が増えたのも近年の目立った傾向だ。走りを極めるというかつてのニーズに比べて、自分好みの控えめなアレンジを望むユーザーが増えていて、展示ブースでもそうしたニーズをすくい上げている。 購入後の性能向上やドレスアップをサポートする「アフターマーケット」向けの展示会だった東京オートサロンは40年を経て、サプライサイドと消費者の壁を超えた共感のコミュニティーに育った。「クルマ離れ」がささやかれる一方で、「マイカー」の呼び名にふさわしい自分らしさをクルマに求めるニーズは根強いようだ。後編では出展各社の取り組みやショーの見どころなどをピックアップする。