「1杯目のビール」は2杯目より何倍うまい?数学的に解明した計算結果が超納得だった!
● ビール1杯目の幸せを 数式にしてみると…… 堀口先生 ここで、y=logexのグラフをかいてみます。(※)ただし、関数の形はわかりやすいようにちょっと変形をしています(y=1/loge2・loge(x+1)という式です)。 (※)e:ネイピア数と呼ばれています。2.7くらいの数です。数学的に非常に扱いやすいため、数学ではたくさん登場します。 マリさん えっとこのグラフはどう見ればよいのですか? 堀口先生 x=1のとき、y=1になることは確認できますね。ここから、xが1ずつ増える毎にyの値が増えていくのは確認できるでしょうか? マリさん はい。 堀口先生 x=1になるとき、ビールの1杯目を飲んだと考えます。そうなると、yが0から1に増えるので、1杯目の“幸せ”を1と表現できるわけです。 マリさん なるほど!でも、なぜlogを考えたんですか? 堀口先生 「ウェーバー・フェヒナーの法則」(編集部注:人間の感覚の大きさは受ける刺激の強さの対数に比例する、という法則)ですね。人の感覚は、logでしたよね。 さて、2杯目についてとらえていきましょうか。x=2になるとき、y=1.585くらいとなりますから、ビール2杯の幸せの合計は1.585です。うち、2杯目の幸せは、yの増加分ですので、0.585くらいになりますね。先ほどより減っています。 マリさん たしかに、2杯目も美味しいですが、ただ、1杯目と比べれば6割くらいになるわけですね。 ● 2杯目のビールの美味しさは 1杯目と比べると6割ほど
堀口先生 この表をグラフにすると以下のようになります マリさん 10杯目以降なんて、ほとんど幸せにはならないですね(笑)。 堀口先生 もちろん、人にはよるとは思いますが。人によっては「10杯目だって美味しい!」と主張される方もいらっしゃることでしょう。 マリさん でも、私はこのグラフにとてもピンときます。 堀口先生 これを見ると、ビールは1杯目だけでよいかもしれませんね(笑)。実は、これ、「限界効用逓減の法則」とよばれています。「1増える」毎の幸せの増え具合は少しずつ減るというもので、いろんな物事に適用できるんですよ。ギャンブルの勝敗でもこの法則に囚われることになります。例えば、1万円勝つのと、2万円勝つのは、嬉しさは2倍になると思いますか? マリさん うーん、どうでしょう。 堀口先生 1万円勝って、次の日にまた1万円勝った方が嬉しくないですか? マリさん たしかに、その通りです。2万円と額は変わらないのですが、言われてみれば、2日連続で勝った方がずっと嬉しいです。そう考えると、ギャンブルをやる人は“勝った”という実感が欲しいのかもしれない、と思いました。 ● 事業もギャンブルの一種?! 脳内アドレナリンを抑えるためには 堀口先生 はい。同様に「1万円勝つ」のと、「10万円勝つ」というのを比べてみましょうか。先ほどのビールの表を使って推測すると、嬉しさは約3.5倍です。 マリさん あれっ、意外と3.5倍くらいにしかならないのですね。 堀口先生 はい。その通りです。これは、ギャンブラーには重要な思考で、自分の意思をコントロールする上で知っておいて損はないです。 マリさん 先生は、ギャンブラーの思考について詳しいのですね。もしかしてギャンブルされるんですか……? 堀口先生 あ……鋭いですね(笑)。例えば、事業というのは一種ギャンブルに近いものがあって、過去にたくさんの失敗を繰り返してしまっています。1回うまくいくと、“またうまくいく”と思い込んでしまう、というのは経験済みです。あとは、周りの人が結構ギャンブルをやっていたので、気持ちはよくわかるのです。 マリさん やはり、事業も一種のギャンブルなのですね。