「腕が4本増えたら」どんな服を着る? 身体拡張をファッション視点で考える【東京大学・稲見昌彦教授】
「ファッション」として私たちが身に着けるアイテムは無数にある。服、靴、眼鏡、リングやハットなどのアクセサリー。もちろんメイクも重要だ。最近はスマートウォッチなどのデバイスにこだわる人も増えている。 ではその延長線上にある未来、人々は何を・どこまでファッションとして楽しめるようになるのだろうか。スマートグラスは眼鏡のようなおしゃれの道具になりうるのか。VRゴーグルはどうか。もしロボットを身体に装着し、手足を増やすことが可能になったら? 服を着る身体の形さえまったく変わってしまうだろう。 実際にそんなチャレンジをしているプロジェクトが東京大学にある。「稲見自在化身体プロジェクト」。テクノロジーによる身体拡張を専門とし、先進的なウェアラブルデバイスやロボットが人間に与える影響を研究している。本記事ではプロジェクトを率いる東京大学先端科学技術研究センター・稲見昌彦教授に取材。まだ誰も定義できていない「近未来のファッション」について考えた。
研究対象は「自動」と「自在」のテクノロジー
ー研究対象は「自動」と「自在」のテクノロジー 現在、労働をはじめとした私たちのさまざまな行為は、AIやロボットなどのテクノロジーによって代替されようとしています。これを一般的に「自動化」と言いますね。しかし一方で「自動化されたくない」行為もあるわけです。 たとえば美味しい料理を食べる。身体を動かしてスポーツを楽しむ。もちろん、服を着ておしゃれをすることも。こうした営みをテクノロジーで活性化させることを「自動化」に対して「自在化」と呼び、それによって身体や人間そのものがどう反応・変化・拡張するのかも含めて研究しているのが「稲見自在化身体プロジェクト」です。
ー同プロジェクトでは「身体に装着するロボット」などのユニークなデバイスが多く研究されています。今回の取材では、こうしたウェアラブルなデバイスを「器具」「装置」としてでなく「ファッション」の視点でどうとらえられるのかを考えたいと思います。 とても面白いテーマですね(笑)。ぴったりの事例を紹介しましょう。電気通信大学の宮脇陽一教授とフランスCNRSのGowrishankar Ganesh主任研究員のチームが開発した「第6の指」という人工身体があります。センサーで筋肉からの電位を感知して、ある程度装着者が自由に動かすことができる。つまり「指を1本増やす」デバイスです。